出産後に経験する抜け毛の増加は、多くの女性が直面する一般的な現象です。
産後に抜け毛が増える原因の多くは、出産に伴い女性ホルモンが急激に低下し、髪の毛の成長サイクルに変化が現れるためです。
ホルモンの影響による抜け毛の場合、時間の経過とともに元の状態に戻り、通常は6か月から1年程度で落ち着いてきます。
そのため、誰にでも起こる現象だと理解し、悩みすぎないことが大切です。
しかし、育児に伴う生活環境の変化によって、産後の抜け毛を誘発してしまっている可能性も考えられます。
産後の抜け毛を悪化させないためには、抜け毛の原因を理解し、自分に合った対策やヘアケアを実践することが重要です。
この記事では、産後の抜け毛が増える原因と対策を解説し、いつからいつまで続くのかという時期的な問題にも触れていきます。
- 女性ホルモンの低下によるヘアサイクルが変化
- 頭皮環境の悪化が考えられる
- 母乳供給による栄養不足・カロリー不足
- 睡眠不足・生活習慣の乱れ
- 産後のストレスやプレッシャー
- 産後の過度なダイエット
- 産後2〜3ヶ月後から気になる人が出てくる
- 個人差はあるが産後6カ月~1年程度で元に戻ると言われている
さらに、自宅で簡単にできる抜け毛対策や、おすすめの育毛剤、抜け毛予防に効果的な食べ物、おしゃれで実用的な髪型やヘアアレンジのアイデアもご紹介します。
産後の抜け毛に関する正しい知識を得ることで、不安を軽減し、前向きに対策を立てることができます。
健康的で美しい髪を取り戻すための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
抜け毛が多いのはなぜ?産後に抜け毛が増える原因

産後に抜け毛が増える理由は、妊娠中に増加していた女性ホルモンが出産後に急激に減少し、それに伴ってヘアサイクルが変化することが考えられます。
また、育児による生活リズムの変化、栄養バランスの乱れなどが原因となり、産後の抜け毛を誘発している可能性も無視できません。
例えば、育児の忙しさから、自分自身のケアに十分な時間を割けなくなることや、睡眠不足、生活習慣の乱れが頭皮環境の悪化に繋がり、抜け毛が増えることがあります。
産後は、育児に対するストレスやプレッシャーも大きく、これが精神的な負担となって抜け毛を悪化させる要因の一つです。
さらに、母乳の供給や産後の過度なダイエットを行うことが栄養不足を招き、抜け毛を悪化させている場合もあります。
これらの要因が重なることで、産後の抜け毛はさらに深刻になることがあるため、適切なケアと対応が必要です。
以下では、産後に抜け毛が増える原因を一つひとつ掘り下げて解説していきます。
女性ホルモンの低下によりヘアサイクルが変化することがある
産後に抜け毛が増える大きな理由の一つに、出産に伴う女性ホルモンの急激な低下があります。
妊娠中は女性ホルモンが多く分泌されるため髪が抜けにくくなりますが、出産後には分泌量が減少し、髪の成長サイクルに変化が生じるためです。
女性ホルモンには、主に「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類があります。
エストロゲンは、妊娠の準備や女性的な体づくり、肌のハリツヤを保つといった役割があり、髪の成長にも関わっています。
妊娠中は髪の成長に関わるエストロゲンの分泌量が増加し、本来抜けるばずの髪も成長が促進され、髪が増えたと感じることが一般的です。
しかし、出産後にはエストロゲンの分泌量が急激に減少することで、髪の毛のサイクルに大きな変化が生じます。
妊娠中は女性ホルモンのプロゲステロンとエストロゲンが増え髪の毛が抜けにくくなるが,産後は急激に女性ホルモンが低下するため,妊娠中に抜けなかった髪が一気に抜け,さらにヘアサイクルの休止期に入ることで一時的に薄くなる
引用元:居原田 麗, 妊娠と美, 女性心身医学,2016 年 21 巻 3 号 p. 290-294
通常、私たちの髪の毛は成長期、移行期、休止期という3つの段階を経てサイクルを繰り返していますが、出産によるホルモンバランスの急激な変化により、多くの髪の毛が一斉に成長期から休止期へと移行します。
- 成長期:約2〜6年
- 移行期:数日間
- 休止期:約2〜3か月
※参照元:植木 理恵,髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-,順天堂醫事雑誌,2013 年 59 巻 4 号 p. 327-330
ヘアサイクルの急激な変化により、産後2〜3ヶ月頃から抜け毛が目立つようになることがあります。
このような産後の抜け毛は「分娩後脱毛症」や「産後脱毛」と呼ばれており、多くの女性が経験する現象です。
産後脱毛は一時的なものであり、個人差はあるものの、出産後のホルモンバランスが徐々に回復するにつれて、髪の状態も改善されていきます。
このように、出産に伴う女性ホルモンの低下によってヘアサイクルが変化することで、産後の女性は一時的に抜け毛が増えるケースが多く見られます。
抜け毛の原因がホルモンの変動であることを理解することで、不安を軽減し、自分に合ったケアを継続することが大切です。
育児の忙しさにより頭皮環境の悪化が考えられる
産後に抜け毛が増える原因は、洗髪への意識の低下による頭皮環境の悪化も考えられます。
産後の育児が忙しくなると、自分のケアに割く時間が限られてしまいがちです。
特に、新生児の世話は24時間体制で行う必要があり、母親の生活リズムは大きく変わります。
育児の忙しさによって自分自身のケアにかける時間が減少してしまうことは珍しくありません。
シャンプーの回数が減ったり、丁寧に洗髪する時間が取れなくなったりすると、頭皮に汗や皮脂、ほこりなどが蓄積し、雑菌の繁殖によって頭皮環境が悪化します。
また、睡眠時間の確保を優先するあまり、髪を乾かさずに就寝してしまうこともあるでしょう。
髪を濡れたまま放置すると、頭皮が長時間湿った状態になり、雑菌が繁殖しやすくなります。
これらの要因が重なると、頭皮のバランスが崩れ、かゆみや炎症、フケの増加などの頭皮トラブルが起こり、髪の成長にも悪影響を与えることがあります。
皮膚を清潔に保たないと頭皮の皮脂が常在微生物の働きにより遊離脂肪酸や過酸化脂質を生成 して毛根の細胞の生理活性を低下させ,
引用元:永山 升三, 西尾 宏.ヘアケアの科学.繊維製品消費科学.1987 年 28 巻 6 号 p. 219-226
頭皮は皮膚の中でも皮脂腺が多い上、髪に覆われているため通気性が良くありません。
そのため、育児の忙しさから洗髪不足や髪が濡れたまま放置するなどの生活が続くと、頭皮環境を悪化させ抜け毛を引き起こしてしまう可能性があります。
母乳供給による栄養不足・カロリー不足になることがある
産後に抜け毛が増える原因の一つとして、母乳供給による栄養不足やカロリー不足も挙げられます。
母乳を与えているママの体内では、乳腺組織が血液中の栄養素を取り込んで母乳を生成します。
母乳を作る過程で、鉄分、亜鉛、タンパク質などの重要な栄養素が消費されます。
授乳中の女性は血液から母乳が作られているため、鉄分やカロリーなどの栄養が多く消費され、髪質の低下や抜け毛の増加を招いてしまいます。
引用元:教えて☆助産師さん - 石巻市
授乳期には数時間おきに1日何度も授乳を行うため、継続的に栄養素と水分が体外に排出されます。
これにより、体内の栄養バランスが崩れやすくなり、栄養不足を引き起こしやすくなります。
さらに、母乳を作るためには多くのエネルギーが必要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、授乳婦は非妊娠時と比べて1日あたり約350kcalの追加エネルギーが必要とされています。
体内の栄養が不足すると、まず生命維持に関わる臓器や機能に優先的に栄養が回されます。
髪の毛や爪など、生命維持には直接関係のない部分は栄養の供給が後回しになりがちです。
そのため、授乳中の女性は栄養不足やカロリーが不足しやすくなり、髪質の低下や抜け毛の増加を引き起こす原因となります。
半年以上かけて進行し,軟毛化を伴わない頭部全域に及ぶ疎毛の場合,慢性休止期脱毛を考える.原因として甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,鉄欠乏性貧血,栄養障害,
引用元:植木 理恵,髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-,順天堂醫事雑誌,2013 年 59 巻 4 号 p. 327-330
育児による睡眠不足・生活習慣の乱れが考えられる
産後の育児による睡眠不足や生活習慣の乱れは、体調不良や血行不良を引き起こし、抜け毛につながる恐れがあります。
産後、赤ちゃんの授乳や夜泣きに対応するため、母親は十分な睡眠を取れなくなりがちです。
また、育児中心の生活では、自分自身の食事や運動、休息などの生活リズムが崩れることもあるでしょう。
特に、睡眠不足や生活習慣の乱れは、自律神経やホルモンのバランスが崩れる原因となりやすく、血行不良や体調不良に繋がります。
睡眠不足や運動不足などが続けば、血流が悪くなったり、からだのリズムが失われて自律神経やホルモンのバランスが乱れます。
引用元:自律神経失調症|日本臨床内科医会
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」のバランスで成り立っていますが、睡眠を十分にとれていないと交感神経が優位となり、血行不良が起こりやすくなります。
- 交感神経:活動時に優位になる。心拍数や血圧を上げて、血管は収縮する。
- 副交感神経:睡眠中や食事中に優位になる。心拍数や血圧を下げて、血管を拡張して体内に血液を供給する。
頭皮の血行が悪くなることで、髪の毛根に十分な酸素や栄養が届かなくなり、抜け毛を引き起こす原因となります。
産後のストレスやプレッシャー
産後の時期は、育児による睡眠不足や疲労、母親としての責任感などから、過度なストレスやプレッシャーを感じることが少なくありません。
女性の10~20%が産後うつを経験すると報告されています13)。特に著しい睡眠不足や夜間の中途覚醒が多い人は、産後うつのリスクが高くなります13)。
引用元:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
産後のホルモンバランスの変化に加え、育児や家事、家庭内の役割分担に対する不安や疲労が重なることで、精神的ストレスが増大します。
このような精神的な負担が体に与える影響は大きく、「急性休止期脱毛」を引き起こす可能性があります。
急性休止期脱毛とは、毛髪が成長期から休止期に急激に移行し、髪が抜けやすくなる状態を指します。
精神的ストレスや高熱、手術といったことが原因により、一時的に抜け毛が増加する現象です。
精神的ストレス,高熱,外科手術,栄養不良,大量出血,出産後脱毛,ピル中止後などの脱毛が急性休止期脱毛と分類されている.
引用元:植木 理恵,髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-,順天堂醫事雑誌,2013 年 59 巻 4 号 p. 327-330
このように、精神的な健康問題が深刻化すると、髪の成長サイクルが乱れやすくなり、産後の抜け毛が増加するリスクが高まります。
産後の過度なダイエットによって抜け毛を誘発している可能性
産後の体型を早く戻そうと、過度なダイエットを試みる女性は少なくありません。
しかし、無理な食事制限や急激な体重減少は栄養不足を招き、抜け毛の原因となる可能性があります。
産後の体は出産や育児で多くのエネルギーや栄養を消耗しており、回復には十分な栄養が不可欠です。
特に、タンパク質や鉄分、ビタミン類が不足すると、髪の成長サイクルに悪影響を及ぼす場合があります。
髪の主成分であるケラチンはタンパク質でできているため、タンパク質が不足すると髪が弱くなりやすくなります。
また、鉄分不足により貧血の状態が続くと毛根に十分な栄養が行き渡らず、髪の成長を遅らせる要因になりかねません。
産後の過度なダイエットによる栄養不足が原因の場合、半年以上かけて進行する「慢性休止期脱毛」が疑われます。
原因として甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,鉄欠乏性貧血,栄養障害,急激な減量によるクラッシュ ダイエット,薬剤性(ビタミン A 過剰,ミノキシジ ル外用薬開始初期など),肝障害,腎障害,悪性腫瘍,膠原病,梅毒など全身疾患との関連が多くみられる.
引用元:植木 理恵,髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-,順天堂醫事雑誌,2013 年 59 巻 4 号 p. 327-330
また、極端なカロリー制限により、体内のホルモンバランスが崩れることも、抜け毛の原因となる可能性があります。
産後はホルモンバランスが変動しやすい時期であり、これに栄養不足が加わると、さらに抜け毛が悪化するリスクが高まります。
健康的な体型の維持を目指す際には、無理のない範囲でバランスの取れた食事を心がけることが大切です。
産後の抜け毛はいつからいつまで続くのか
女性ホルモンの低下による抜け毛の増加は「産後脱毛」や「分娩後脱毛症」と呼ばれ、多くの女性が経験する生理的な脱毛の一種です。
産後脱毛は一時的なものであり、ほとんどの場合、6か月から1年程度で通常の状態に戻ります。
しかし、どのくらいのペースでどの程度の抜け毛が起こるのかがわからないと、不安な気持ちを抱えたまま抜け毛の増加を経験することになってしまいます。
産後脱毛のしくみやプロセスを理解しておくことは、抜け毛に対するストレスや不安を軽減することに繋がります。
以下では、産後の抜け毛がいつから始まり、ピークはいつ頃か、いつまで続くのかといった具体的なサイクルを詳しく解説します。
産後2~3か月頃から抜け毛が気になりはじめる人が多い
産後に抜け毛が気になり始める人が多いのは、一般的に出産後2か月〜3か月頃です。
通常、ヘアサイクルの成長期にある毛髪の割合は85〜90%程度ですが、妊娠4か月以降からは約95%まで増加します。
そこから出産を経て、産後3週間目頃から成長期毛の割合が急速に減少しはじめ、6週目から6か月頃にかけて75%まで減少していきます。
- 妊娠前(通常時):85〜90%
- 妊娠4か月以降:約95%まで増加
- 産後6週目以降:約75%まで減少
※参照元: 大阪船員保険病除「大阪船員保険病除だより 第29号 平成19年5 月」
このように、産後2か月〜3か月頃は妊娠中に抜けなかった髪が一気に抜けはじめる時期のため、シャンプーやブラッシングの際に抜け毛が気になり始める人が多くなります。
産後の抜け毛ピークは産後4か月~6か月頃
産後の抜け毛が最も多くなるピークは、出産後4か月〜6か月頃です。
妊娠中に約95%あった成長期毛は、産後6か月頃までに約75%まで減少し、髪の成長が止まる「休止期」へ移行します。
さらに、ヘアサイクルが休止期から成長期に移るまでには、約2〜3か月の期間がかかります。
- 成長期:約2〜6年
- 移行期:数日間
- 休止期:約2〜3か月
※参照元:植木 理恵,髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-,順天堂醫事雑誌,2013 年 59 巻 4 号 p. 327-330
休止期にある約25%の毛髪は成長が止まっているため、髪のボリュームが減り、特に生え際や分け目の部分が薄く見えることがあるでしょう。
産後6か月~1年程度で元に戻ることが多い
産後4か月〜6か月頃のピークを過ぎると、徐々に髪の成長サイクルが正常に戻り、新しい髪が生え始めます。
通常、出産後6か月頃から1年程度で徐々に抜け毛が収まり、落ち着いてくるパターンが多いようです。
個人差はあるが産後6カ月~1年程度で元に戻るといわれている
引用元:居原田 麗, 妊娠と美, 女性心身医学,2016 年 21 巻 3 号 p. 290-294
成長期に入った髪の毛は、1日に約0.4mm、1か月に約1〜1.3cm、1年間で約12〜15cmの速度で伸びるため、焦らずにじっくりと待ちましょう。
ただし、髪の成長速度には個人差があるため、回復に時間がかかる場合もあります。
もしも1年以上経っても抜け毛が続く場合や、髪の状態が思うように戻らない場合は、専門機関に相談することをおすすめします。
自宅でできる産後の抜け毛対策
産後の抜け毛は多くの女性が経験する悩みであり、一定の期間を乗り越えれば落ち着いてくることが一般的です。
しかし、抜け毛の悪化を防ぐために、栄養バランスの取れた食事や、十分な睡眠時間を確保することは髪や頭皮の健康のために必要です。
必要な栄養素をサプリメントで補うことや、睡眠の質を上げるアイテムを使用することで、少ない時間の中でも不足分を補えるかもしれません。
また、自分自身のケアが後回しになりがちな産後ママは、ヘアケア不足から、頭皮環境が悪くなっている可能性があります。
髪や頭皮に優しいシャンプーを選んだり、清潔で通気性の良い頭皮環境を維持したりとヘアケアへの意識を向けることも心がけてみてください。
抜け毛がかなり気になる場合は、育毛剤や医薬品の使用を検討するのも良いでしょう。
ここでは、育児で忙しい生活の中でも自分で簡単にできる産後の抜け毛対策をご紹介します。
ご自身の状況に合わせて、無理のない範囲で取り入れてみてください。
1日全体で栄養バランスの摂れた食事をしっかりと食べる
産後の生活は育児に追われ、ゆっくりとご飯を食べる時間がないかもしれません。
しかし、髪の毛の健康にはタンパク質やミネラル類、ビタミン類などの栄養素が必要となります。
特に、髪の主成分であるタンパク質、タンパク質の合成に関わる亜鉛、代謝や肌の健康維持に関連するビタミンなどは重要な栄養素です。
母乳を作るために、多くの鉄分やエネルギーも消費します。
このように、健康な髪と頭皮を維持するためには、髪に良いとされる食べ物はもちろん、全体的にバランスの取れた食事をとることが重要です。
栄養バランスの良い食事は、産後の体力回復や免疫機能の維持といった体全体の健康維持にも役立つため、間接的にも抜け毛予防につながります。
毎回の食事で何品も食べるのが難しい場合は、小分けにして少しずつ食べるなどして、1日全体で栄養バランスの取れた食事ができるよう意識してみてください。
髪や地肌に優しいシャンプーを使う
産後の女性は、女性ホルモンの低下や育児多忙によるヘアケア不足などにより、頭皮環境が悪化していることも少なくありません。
髪や頭皮への負担を軽減するために、刺激の弱い優しいシャンプーを使用するのがおすすめです。
優しい洗浄力で代表的なのは、アミノ酸系やベタイン系のシャンプーです。
特にアミノ酸系シャンプーは、肌と同じ弱酸性のアミノ酸を主成分としているため、髪や頭皮への刺激を最小限に抑え、優しく洗浄できます。
また、保湿成分が含まれているシャンプーなら、頭皮の乾燥を防ぎ、頭皮のかゆみやフケを予防する効果も期待できます。
髪に潤いを与えることで、髪のパサつきもカバーできるでしょう。
産後の抜け毛対策として、髪や地肌に優しいシャンプーを選ぶことは、頭皮の健康を守り、抜け毛を軽減するためにおすすめの方法です。
睡眠時間をなるべく確保する

産後ママの悩みとして、睡眠時間を十分に取れないことも挙げられます。
夜間の授乳や育児に追われ、ゆっくりと睡眠できない生活が続きますが、健康な髪の成長には十分な睡眠が必要です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、成人は6時間以上の睡眠時間の確保が推奨されているため、個人差はありますが1日6時間程度の睡眠が望まれます。
しかし、夜泣きや夜間の授乳などでまとまった睡眠時間を取れない日も多いでしょう。
その場合は、赤ちゃんが寝ている時間に自分も仮眠をとることで、少しでも多くの睡眠時間をとることが重要です。
睡眠にはサイクルがあり、深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠を約90分周期で繰り返しています。
ノンレム睡眠中には成長ホルモンの分泌が行われ、代謝や脂肪分解を促進する作用などがあります。
ノンレム睡眠は、入眠後から3時間の間に出現することが多いため、長時間の確保が難しくても、昼寝や仮眠などを利用することが大切です。
就寝時刻が何時であっても十分な睡眠が取れていれば、成長ホルモンは活発に分泌されます。
引用元:薄毛を知る - 日本毛髪科学協会
また、ノンレム睡眠中は自律神経の副交感神経が優位になり、心身を回復・修復させることや、体内の血行促進にも繋がります。
抜け毛対策と休息をとるためにも、赤ちゃんの睡眠パターンに合わせて自身の体を休ませましょう。
睡眠の質が上がるアイテムを取り入れる

筆者が実際に使っているアイマスクとイヤーキャップ
短い睡眠時間の中でも睡眠の質が向上すれば、体調や血行に良い影響を与えます。
健康増進には十分な睡眠時間の確保が重要ですが、それと同じくらい睡眠により休養感が得られることが重要です。
引用元:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
そこで、睡眠の質が上がるリラックスアイテムや寝具を取り入れることもおすすめです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、良質な睡眠のための環境づくりとして、できるだけ暗くて静かで、快適な温度環境であることを推奨しています。
遮音・遮光カーテンやアイマスク、温度調節機能付きの寝具、冬場ならレッグウォーマーなど体を温められるものがあると入眠しやすくなります。
スムーズに入眠するためにリラックスアイテムを取り入れるのも効果的です。
アロマディフューザーでリラックス効果のある香りを使用する他、周囲の騒音が気になるようならホワイトノイズマシンで環境音を流すなどの方法があります。
短い時間で快適な睡眠ができるよう、低反発枕や3D形状の枕など、首や頭をサポートする設計のものを使用するのも良いでしょう。
これらのアイテムを自分に合ったものを選び、睡眠環境を整えることで、睡眠の質の向上が期待できます。
清潔で通気性のいい頭皮環境を維持する
産後は育児に追われ、自分のケアまで手が回らないことも多いでしょう。
しかし、汗をかいたり、ヘアケアが不十分だったりすると、頭皮に皮脂や汚れが蓄積しやすくなります。
頭皮を清潔に保つためには、定期的なシャンプーを心がけましょう。
頭皮に溜まった皮脂は、洗髪後24時間後には元の状態に戻ってしまうという研究も発表されています。
洗髪による頭脂の除去量は,18~26才の成年女子の場合の平均値を例示しますと,一回目のシャンプーで72.8 %,二回目の洗髪で78.4%でした.また洗髪後の皮脂は,シャンプー後24時間でほぼ洗髪前の水準に回復します.
引用元:永山 升三, 西尾 宏.ヘアケアの科学.繊維製品消費科学.1987 年 28 巻 6 号 p. 219-226
どうしても時間がない時は、ドライシャンプーの使用や、前髪や生え際など特に気になる部分だけを部分的に洗うことも効果的です。
髪が長い場合は、蒸しタオルを頭に巻いて少し時間を置くと、髪と頭皮の汚れを浮き上がらせられるためおすすめです。
髪が長い場合は特にお湯でぬらしたタオルを絞ったものや蒸しタオルで頭を巻いて、少し時間を置くと髪の毛と頭皮についている汚れが浮き上がるのでさっぱりします。
引用元:お風呂に入れない時の清潔の保ち方 | 足利市 公式ホームページ
ただし、いずれの方法も頭皮の汚れを全て除去できるわけではないため、可能な限り入浴やシャワーを行い、清潔な頭皮環境を保つことが大切です。
時間がある時には丁寧に洗髪し、頭皮マッサージも取り入れると血行促進にもつながります。
シャンプー前にやわらかい毛先のブラシで優しくブラッシングすることで、頭皮の古い角質や汚れを取り除き、血行を促進させる効果も期待できます。
また、頭皮の通気性を良くすることも重要です。
髪を一か所に固めて縛ったままにせず、時々結び目を変えたり、緩めたりしてください。
髪が長い方は、バッサリとショートカットなどにするのもおすすめです。
頭皮の通気性が良くなり、ヘアケアの時短にも繋がるため、育児に忙しい産後ママでも頭皮を清潔に保ちやすいでしょう。
抜け毛やヘアケアに効果的とされる亜鉛に注目する
産後の抜け毛対策として、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切ですが、忙しい育児の合間にバランスの取れた食事を摂るのは難しいものです。
そこで、サプリメントの活用がおすすめです。
特に注目したいのが、亜鉛を含むサプリメントです。
亜鉛は髪の主成分であるケラチン(たんぱく質)の合成を助ける役割があり、不足すると抜け毛を促進する可能性があります。
亜鉛や鉄などの毛髪を作るのに重要なミネラルが欠乏するために生じる場合もあります。
引用元:脱毛症|慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
また、大豆イソフラボンやエクオールを含むサプリメントも注目されています。
大豆イソフラボンやエクオールは、女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするため、産後の急激なホルモンバランスの変化を緩和し、抜け毛を軽減する効果が期待できます。
亜鉛や女性ホルモン様作用(大豆 イソフラボンなど)のサプリメントなどで改善を図る.
引用元:居原田 麗, 妊娠と美, 女性心身医学,2016 年 21 巻 3 号 p. 290-294
サプリメントを利用することで、忙しい毎日でも効率的に必要な栄養素を摂取できます。
ただし、サプリメントの摂取は万能ではありません。
あくまでも健康的な食生活を送る上での補助的な役割であることを忘れずに、バランスの取れた食事と組み合わせて活用しましょう。
また、妊娠中や授乳中の方は、サプリメントの摂取について必ず医師や専門家に相談してから始めることをおすすめします。
抜け毛がかなりひどい場合は育毛剤や医薬品を使用する
産後の抜け毛は病気ではなく一時的なものですが、抜け毛の程度が気になる場合や、より積極的にケアをしたいと感じる方もいるでしょう。
そのような場合、育毛剤や医薬品の使用を検討してみるのも一つの選択肢です。
ただし、育毛剤や医薬品の使用を検討する前に、必ず医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスを受けることで、自分の状態に適した製品を選ぶことができ、正しい使用方法での抜け毛対策ができます。
育毛剤には、頭皮の血行を促進したり、頭皮環境を改善する成分が含まれているものがあります。
一般的なものとしては血行促進作用のあるセンブリ抽出液やニコチン酸アミドなど,頭皮状態を改善するための抗炎症作用のあるグリチルリチン酸ジカリウムや殺菌作用のあるオクトピロックスなどが配合されている。
引用元:伊藤 隆司, 頭髪用製品とその作用, 日本香粧品学会誌,2019 年 43 巻 3 号 p. 199-208
また、医薬品の中には、脱毛の進行を遅らせる効果が期待できるものもあり、適切に使用することで抜け毛の悩みが軽減される可能性があります。
ただし、育毛剤や医薬品の効果には個人差があり、即効性には期待できません。
継続的な使用が大切ですが、使用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医療機関に相談しましょう。
このように、育毛剤や医薬品を使用することで、抜け毛の進行を抑えたり、髪の毛のコンディションを改善したりできる可能性があります。
髪の毛の悩みが軽減され、自信を取り戻すきっかけになるかもしれません。
ただし、産後の抜け毛は一時的なものであることを忘れずに、焦らず気長に対策を続けていくことが大切です。
産後の抜け毛対策におすすめの食べ物
産後の抜け毛対策には、バランスの取れた栄養摂取が重要です。
特に、髪の健康に関わる栄養素を含む食品を意識的に取り入れることで、抜け毛の改善や予防に役立つ可能性があります。
髪や頭皮に良い栄養素には、タンパク質や亜鉛、大豆イソフラボン、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンCなどがあります。
これらの栄養素を多く含む食材と、髪や頭皮へ期待できる効果は以下の通りです。
食品名 | 栄養素 | 期待できる効果 |
---|---|---|
赤身肉、卵 | タンパク質 | 髪の成長や修復 |
大豆・大豆製品 | タンパク質 大豆イソフラボン | 髪の成長や修復 ホルモンバランスの調整 |
いわし・さばなどの魚 | タンパク質 ビタミンB 亜鉛 | 髪の成長や修復 髪の成長促進や頭皮の健康維持 タンパク質を合成 |
牡蠣 | 亜鉛 | タンパク質を合成 |
わかめなどの海藻類 | 亜鉛 | タンパク質を合成 |
緑黄色野菜 | ビタミンA ビタミンB | 頭皮の健康維持 髪の成長促進や頭皮の健康維持 |
アセロラ・ゆず・レモンなどのフルーツ | ビタミンC | 髪のハリやツヤ、頭皮の健康維持 |
上記の栄養素は、どれか一つを摂れば抜け毛対策できるというものではなく、バランス良く摂取することで体内の代謝や細胞の働きが活性化されます。
日々の食事に意識的に取り入れて、多くの食品を継続して食べることが大切です。
以下では、おすすめの食べ物に多く含まれる栄養素や髪と頭皮に与える影響、栄養素の含有量や摂取目安量について詳しく解説します。
赤身肉や卵(タンパク質)
赤身肉や卵は、髪の毛の主成分であるタンパク質を多く含む食材です。
髪の毛の約90%はケラチンというタンパク質でできており、髪の成長や修復にはタンパク質が不可欠です。
特に、産後は授乳によって多くのタンパク質を必要とするため、積極的に摂取したい栄養素です。
授乳中は母体から見れば母乳に含まれるたんぱく質を損失する。したがって、この分を維持必要量に付加しなくてはならない。
引用元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
赤身肉とは脂肪が少ない肉のことを指し、ヒレ、もも、肩、肩ロースなどが該当します。
豚肉と牛肉の主なたんぱく質含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(100gあたり) |
---|---|
豚ヒレ(赤肉・焼き) | 39.3g |
豚もも(皮下脂肪なし・焼き) | 30.2g |
牛もも(皮下脂肪なし・焼き・輸入牛肉) | 28.0g |
牛かた(脂身つき・焼き・乳用飼育牛肉) | 23.0g |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、タンパク質の1日あたり摂取量は成人女性で50g、授乳期には70gが推奨されています。
赤身肉を約200g食べると、授乳期に必要なたんぱく質をほぼ満たせることになります。
赤身肉にはたんぱく質の他にも鉄分、亜鉛、ビタミンB群など髪に良い栄養素が含まれているため、毎日の食事に使用する肉を変えるなどして、赤身肉を積極的に取り入れると良いでしょう。
卵も良質なタンパク質源です。
卵の調理方法によってタンパク質の含有量は異なり、主な含有量は以下の通りです。
調理方法(全卵) | 含有量(100gあたり) |
---|---|
目玉焼き | 14.8g |
炒り卵 | 13.3g |
ゆで卵 | 12.5g |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
タンパク質の他、卵には髪と頭皮の健康に必要なビタミンB群も含まれています。
特に、卵黄に含まれるビオチンは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素で、爪や髪の健康に深く関わっています。
ただし、卵白にはアビジンというタンパク質が含まれており、生で食べるとアビジンがビオチンと結合し、ビオチンの吸収を阻害してしまうことが注意点です。
アビジンは熱に弱い特徴があるため、卵は加熱して食べるのがおすすめです。
卵白に含まれる糖たんぱく質であるアビジンは、ビオチンと不可逆的に結合するため、ビオチンの吸収を妨げる。
引用元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
大豆・大豆製品(タンパク質・大豆イソフラボン)
大豆にはタンパク質や大豆イソフラボンを中心に、髪や頭皮の健康に良い様々な栄養素が含まれています。
100gの国産大豆(乾燥)には33.8gものタンパク質が含まれており、髪の主成分であるケラチンの合成を促進し、髪の強度を高めます。
大豆の調理方法や大豆製品によってタンパク質の含有量は異なります。
以下は、タンパク質を多く含む大豆・大豆製品です。
食品 | タンパク質含有量(100gあたり) |
---|---|
いり大豆 | 37.5g |
おから(乾燥) | 23.1g |
蒸し大豆 | 16.6g |
挽きわり納豆 | 16.6g |
木綿豆腐 | 7.0g |
絹ごし豆腐 | 5.3g |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
大豆イソフラボンは大豆に含まれる機能性成分の一つで、女性ホルモンに似た働きをするため、産後のホルモンバランスの乱れを緩和する効果が期待できます。
大豆や大豆製品の大豆イソフラボン含有量は、以下の通りです。
食材 | 大豆イソフラボン含有量(100gあたり) |
---|---|
大豆 | 88.3~207.7mg(140.4mg) |
木綿豆腐 | 15~35mg(21mg) |
絹豆腐 | 12~29mg(21mg) |
味噌 | 14.3~81.4mg(49.7mg) |
醤油 | 0.7~1.2mg(0.9mg) |
※参照元:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A:農林水産省
※大豆イソフラボンアグリコン換算量として。()内は平均値。
食品安全委員会の「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、大豆イソフラボンの安全な1日あたりの摂取目安の上限は70〜75mgとされています。
例えば、豆腐一丁は約350gなので、日常の食事に取り入れる分には上限値を超える心配はないでしょう。
タンパク質や大豆イソフラボンの他にも、大豆にはビタミンB群や亜鉛など髪に良いとされる栄養素が含まれています。
味噌汁やサラダなどに大豆製品を取り入れ、積極的に摂取しましょう。
いわし・さばなどの魚(タンパク質・ビタミンB・亜鉛)
いわしやさばなどの魚には、タンパク質、ビタミンB群、亜鉛などが含まれており、髪に良い栄養素をバランス良く摂取できます。
髪の主成分はケラチンというタンパク質であり、亜鉛はタンパク質を合成する働きのある栄養素です。
どちらが不足しても健康な髪は作られないため、抜け毛対策には必要不可欠な栄養素です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、授乳中の女性は1日あたり70gのタンパク質、12mgの亜鉛の摂取が推奨されています。
以下は、いわしとさばの種類や調理法ごとのタンパク質、亜鉛の含有量です。
食品名 | タンパク質含有量 | 亜鉛含有量 |
---|---|---|
かたくちいわし(煮干し) | 64.5g | 7.2mg |
うるめいわし(丸干し) | 45.0g | 2.7mg |
まいわし(焼き) | 25.3g | 2.3mg |
ごまさば(生) | 23.0g | 1.1mg |
まさば(焼き) | 25.2g | 1.4mg |
塩さば(加工品) | 26.2g | 0.6mg |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
※100gあたり
ビタミンB群は、タンパク質やエネルギーなどの代謝をサポートする役割の他、皮膚や髪の健康を維持するために必要な栄養素です。
特に魚類には、ビタミンB2とB6、B12が豊富に含まれています。
- ビタミンB2:エネルギーの代謝に関わっており、健康な髪や頭皮の維持に役立つ
- ビタミンB6:アミノ酸の代謝に関わっており、ケラチンの合成に役立つ
- ビタミンB12:アミノ酸の代謝や赤血球の生成に関わっている
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、授乳中の女性は1日あたりビタミンB2を1.8mg、ビタミンB6を1.4mg、ビタミンB12を3.2㎍摂取することが推奨されています。
以下は、いわしやさばのビタミンB類の含有量です。
食品名 | ビタミンB2 | ビタミンB6 | ビタミンB12 |
---|---|---|---|
かたくちいわし(煮干し) | 0.10mg | 0.28mg | 41.0㎍ |
うるめいわし(丸干し) | 0.43mg | 0.69mg | 25.0㎍ |
まいわし(焼き) | 0.43mg | 0.39mg | 22.0㎍ |
ごまさば(生) | 0.28mg | 0.65mg | 13.0㎍ |
まさば(焼き) | 0.37mg | 0.54mg | 22.0㎍ |
塩さば(加工品) | 0.59mg | 0.41mg | 7.1㎍ |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
※100gあたり
その他、いわしやさばには血をサラサラにするDHAやEPAが多く含まれており、血行を促進して毛根に栄養が行き届きやすくなる効果が期待できます。
魚介類や魚油を摂取すると,主としてDHAやEPAの生理作用により,血栓ができにくくなり,血漿中のコレステロールやトリアシルグリセリンが低下し,血 液性状が改善され,血圧の低下も認められる
引用元:鈴木 平光.魚油の健康機能.日本油化学会誌.1999 年 48 巻 10 号 p. 1017-1024,1197
このように、いわしやさばには複数の栄養素が含まれており、髪の成長サイクルを正常化し、頭皮の健康を維持することで、産後の抜け毛対策に役立ちます。
牡蠣(亜鉛)
牡蠣は亜鉛を豊富に含むことで知られており、抜け毛対策におすすめの食材です。
亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成に不可欠な栄養素で、タンパク質を体内で効率よく利用するのに必要です。
以下のように、牡蠣の調理法によって亜鉛の含有量は異なります。
食品名 | 亜鉛含有量(100gあたり) |
---|---|
かき(くん製油漬缶詰) | 25.0mg |
かき(養殖・水煮) | 18.0mg |
かき(養殖・生) | 14.0mg |
かき(養殖・フライ) | 12.0mg |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
牡蠣には亜鉛の他、タンパク質やビタミンB群、鉄分なども含まれています。
中でもビタミンB12が多く含まれており、牡蠣の水煮の場合100gあたり24.0㎍と豊富です。
ビタミンB12は赤血球の生成を助ける役割があるため、血行を促進して毛根に必要な栄養素を届けるのに役立ちます。
このように牡蠣には産後の抜け毛対策に有効な栄養素がバランス良く含まれており、日常の食事に適度に取り入れると良いでしょう。
また、ビタミンCを含む食品と一緒に摂取すると、鉄や亜鉛の吸収率が向上するため、レモンやすだちなどを絞って食べるとより効果的です。
ただし、亜鉛の耐用上限量は、女性の場合1日あたり35mgなので、牡蠣の食べ過ぎには注意しましょう。
わかめなどの海藻類(亜鉛)
わかめなどの海藻類は豊富なミネラル源であり、ビタミンや食物繊維といった栄養素もバランス良く含まれています。
ミネラルは5大栄養素の一つで、臓器や細胞の活動をサポートする栄養素です。
特に亜鉛は、髪の主成分であるタンパク質「ケラチン」の合成を促進する役割があり、髪の成長に大きく関わっている栄養素です。
亜鉛を多く含む海藻類には、以下のものがあります。
食品名 | 亜鉛含有量(100gあたり) |
---|---|
乾燥わかめ(板わかめ) | 5.2mg |
カットわかめ(乾) | 2.8mg |
あまのり(味付けのり) | 3.7mg |
あまのり(焼きのり) | 3.6mg |
みついしこんぶ(素干し) | 1.3mg |
ほしひじき(鉄釜・乾) | 1.0mg |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
海藻類には、亜鉛以外にもケラチンの合成に必要なアミノ酸や、代謝を助ける栄養素が多数含まれています。
バランスの良い食事に加え、味噌汁やサラダの具材など、毎日の食事で海藻類も積極的に取り入れましょう。
緑黄色野菜(ビタミンA・B)
緑黄色野菜は、ビタミンAやビタミンBを豊富に含んでおり、健康な頭皮環境の維持や髪の成長に深く関わっています。
ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保つ働きや、頭皮の酸化ストレスを軽減する働きがあります。
頭皮ケア不足によって汚れや皮脂がたまると頭皮トラブルの原因となりますが、ビタミンAの摂取は頭皮環境を健やかに保つのに役立ちます。
ビタミンB群は代謝をサポートする役割を果たしており、健康な髪と頭皮に欠かせない栄養素です。
毎日の食事でビタミンAとビタミンBをバランス良く摂取することで、産後の抜け毛対策に役立つでしょう。
ビタミンAとビタミンBを多く含む緑黄色野菜は、以下の通りです。
- にんじん
- ほうれん草
- モロヘイヤ
- 春菊
- ブロッコリー
- にら
- かぼちゃ
- 小松菜
※参照:食品成分データベース|文部科学省
例えば、ほうれん草には血行を改善するビタミンAや鉄分、毛母細胞の活性化をサポートする葉酸などが豊富に含まれています。
ブロッコリーは、ビタミンAに変換されるβ-カロテンや、ビタミンB、ビタミンC、食物繊維などの栄養素が豊富です。
モロヘイヤは、β-カロテンとビタミンB2の他、抗酸化作用を持つビタミンEも多く含む食材です。
なお、ビタミンBは熱に弱い「水溶性ビタミン」の一種のため、火を加えると壊れてしまうことがあります。
また、水に溶けやすく流出しやすいため、サラダに入れる、スープに入れるなどして食べると効率的に栄養を摂取できます。
アセロラ・ゆず・レモンなどのフルーツ(ビタミンC)
アセロラ、ゆず、レモンなどの柑橘系フルーツはビタミンCを豊富に含んでおり、産後の抜け毛対策におすすめです。
ビタミンCの主な働きは以下の通りです。
- コラーゲンの生成を促進し、髪にハリとツヤを与える
- 皮膚のコンディションを整え、頭皮環境を改善する
- 抗酸化作用により、頭皮の酸化ストレスを軽減する
ビタミンCを多く含むフルーツは、以下の通りです。
食品名 | ビタミンC含有量(100gあたり) |
---|---|
アセロラ(酸味種・生) | 1700mg |
ゆず(果皮・生) | 160mg |
レモン(全果・生) | 100mg |
グァバ(赤肉種・生) | 220mg |
キウイフルーツ(緑肉種・生) | 100mg |
※参照:食品成分データベース|文部科学省
特にアセロラはビタミンC含有量が非常に多いことで知られており、100gあたりの含有量は甘味種で800mg、酸味種で1700mgです。
アセロラには、ビタミンCの他にβカロテンや赤血球の生成を助ける葉酸なども含まれています。
また、柑橘系フルーツに含まれるポリフェノールには強い抗酸化作用があり、酸化ストレスによる頭皮へのダメージを軽減します。
毎日の朝食や完食時に食べたり、料理に絞ったりしてフルーツを積極的に取り入れましょう。
産後の抜け毛をカバーできるおすすめの髪型&ヘアアレンジ
産後の抜け毛は気になるものですが、髪型やヘアアレンジで上手にカバーできる場合があります。
例えば、分け目のボリュームダウンが気になる場合は、いつもと逆の分け目にすることで自然に隠せます。
髪が長い方で全体的なボリュームアップを目指すなら、おだんごヘアがおすすめです。
思い切ってショートヘアにすれば、分け目を隠しつつ、毎日のお手入れも楽になります。
また、前髪のツンツン毛が気になる方は、おろしバングで自然に隠すことも可能です。
髪型を変えるのが難しい場合は、外出時に帽子を活用するのも効果的です。
これらの方法を状況に応じて使い分けることで、産後の髪の悩みを解消しつつ、新しい自分を見つける良いきっかけにもなるでしょう。
以下では、産後の抜け毛をカバーできるおすすめの髪型&ヘアアレンジを詳しく紹介します。
分け目のボリュームダウンが気になる時は「分け目をいつもと逆に」

分け目がずっと同じだとボリュームダウンが気になる

分け目を変えることで髪のボリュームが出る
産後の抜け毛による分け目のボリュームダウンが気になる場合、髪の分け目を普段とは逆にすることをおすすめします。
日常的に同じ分け目を保つことで、その部分の髪の根元が平らになり、ボリュームが出にくくなる傾向があります。
しかし、分け目を変えることで、根元の髪が立ち上がりやすくなり、自然なボリューム感を取り戻すことができます。
例えば、いつも左側に分けている方は、右側に分けることで、ボリュームダウンして見えていた部分にふんわりとした立体感が生まれます。
特別なテクニックなく簡単にできるので、毎日のヘアアレンジに取り入れてみてください。
全体のボリュームが気になる時は「おだんご」でボリュームアップ
産後の抜け毛によって全体的に髪のボリュームが減り、寂しく感じる時には、おだんごヘアがおすすめです。
特にミディアムからロングヘアの方にとって、おだんごは髪全体をまとめつつ、自然なボリューム感を演出するのにぴったりなアレンジです。
おだんごヘアにすることで、髪の毛を高い位置に集めるため、トップや後頭部にボリュームが生まれ、薄毛が気になる部分を効果的に隠すことができます。
また、おだんごを少しルーズに仕上げることで、さらに立体感をプラスし、ふんわりとした印象を与えることが可能です。
髪をまとめる時に、前髪やサイドの髪を少し残して顔周りに流すと、柔らかさが加わり、より女性らしい印象になります。
髪の悩みをカバーしつつ、おしゃれな見た目をキープしたい方は、ぜひおだんごヘアを取り入れてみてください。
「ショートヘア」で分け目を隠しつつお手入れを楽に!
産後の抜け毛が気になる方にとって、ショートヘアは非常に効果的なスタイルです。
ショートヘアは分け目がはっきりしないため、ボリュームダウンした部分が目立ちにくく、自然に薄毛をカバーできます。
さらに、髪が短い分、ふんわりとしたスタイリングがしやすく、全体にボリューム感を持たせることも可能です。
また、育児中のママにとって、時間の確保は非常に難しいものです。
ショートヘアなら毎朝のスタイリングやお手入れの時間が大幅に短縮できます。
髪を乾かす時間も少なく済むので、育児の合間にサッとお手入れができ、ヘアケア不足による頭皮トラブルの防止にもつながります。
前髪のツンツン毛が気になる時は「おろしバング」で隠す
産後の抜け毛によって生え始めた短い前髪がツンツンと目立つことがあります。
こうしたツンツン毛が気になる場合は、前髪をおろしてカバーする「おろしバング」がおすすめです。
前髪を作ることで、短い毛が目立ちにくくなり、自然なスタイルを保つことができます。
さらに、アホ毛ケアスティックやスタイリング剤を使って、ツンツン毛をしっかりと抑えることで、より整った仕上がりになります。
髪全体のバランスを整えつつ、手軽に気になる部分をカバーできるので、忙しいママでも簡単に取り入れられるヘアアレンジです。
おろしバングは顔まわりの印象も柔らかくしてくれるため、気になる箇所を隠しつつ、優しい雰囲気を演出できるでしょう。
髪型を変えたくないなら外出時は「帽子」で隠す

帽子を被ることで頭皮の紫外線対策にもなる
髪型を変えたくないけれど、分け目やツンツン毛が気になる場合、外出時に帽子を使うのが一番手軽で効果的な方法です。
キャップやハットを被ることで、気になる部分を手軽に隠せるため、特に忙しい時や髪型のセットに時間をかけたくない時に便利です。
ただし、帽子を長時間着用すると頭皮の通気性が悪くなり、蒸れやすくなります。
頭皮環境に影響を与え、かえって抜け毛の原因になる可能性もあるため注意が必要です。
帽子を使う場合は、通気性の良い素材を選ぶことや、必要な時だけ着用して室内では外すなど、頭皮環境に配慮すると良いでしょう。
産後の抜け毛は一時的な現象である場合が多いため、自分でできるケアから始めてみよう
この記事では、産後の抜け毛が増える原因と期間、先輩ママの体験談、自分で始められる対策方法についてご紹介しました。
産後の抜け毛について要点をまとめると、以下の通りです。
- 産後の抜け毛の主な原因は、出産に伴う女性ホルモンの低下によりヘアサイクルが変化したため
- 産後の抜け毛は誰にでも起こる生理現象の一つである
- 産後2〜3か月頃から抜け毛が増え始め、6か月〜1年程度で落ち着くことが多い
- 産後の抜け毛を悪化させる要因として、ヘアケア不足、栄養不足、睡眠不足、生活習慣の乱れ、ストレスなどが考えられる
- 自分でできる産後の抜け毛対策として、栄養バランスの良い食事、質の良い睡眠、清潔な頭皮環境を意識することが大切
- 低刺激シャンプーや育毛剤などのヘアケアアイテムの使用、サプリメントでの栄養補給も対策方法の一つである
産後に抜け毛が増えることは、多くの先輩ママも経験している誰にでも起こり得る自然な現象です。
突如大量の抜け毛が増え始め、不安な気持ちを抱える方も多いかと思いますが、生理現象だと割り切って悩みすぎないことが大切です。
また、産後の抜け毛を悪化させないためには、育児で忙しい中でも自分自身のヘアケアや栄養補給を意識し、可能な限り休息をとりましょう。
パートナーや家族に任せられる部分は頼って、一人で抱え込まず、まずは自宅でできる対策やケアを取り入れてみてください。