ヘアアイロンを使用する際、温度設定を気にせず高温で使用していませんか。
実は、ヘアアイロンの温度設定は髪の健康にとって非常に重要な要素です。
- 細い髪120-140℃、普通毛140-160℃、太い髪160-180℃に設定
- 推奨温度の下限から始めて必要最小限の温度で使用する
- 130℃以上で髪のダメージが始まり不可逆的変性が発生
- 低温で何度もやり直すより適切な高温で短時間で仕上げる
- 100-230℃の幅広い温度調節機能付きアイロンを選ぶ
高温での使用は髪のタンパク質を変性させ、キューティクルを損傷し、水分を奪うことで、深刻なダメージを引き起こす可能性があります。
結論として、髪質に応じて120℃から180℃の範囲で温度を調整し、ヒートプロテクターを使用し、濡れた髪への使用を避けることで、髪の健康を維持しながらスタイリングを楽しむことができます。
- 髪質に合わせた適正温度の設定方法
- ヘアアイロンによる髪ダメージのメカニズム
- ダメージを最小限に抑えるための具体的な対策
ヘアアイロンの温度が髪に与える影響とダメージのメカニズム
ヘアアイロンによる熱は、髪の構造に大きな変化をもたらします。
髪の主成分であるケラチンタンパク質は、高温にさらされると変性し始めます。
具体的には、200℃前後での熱処理は髪のα-ヘリックス構造を破壊し、α-ヘリックス物質の含有量が大幅に減少する可能性があると考えられています。
この温度による影響は、髪の内部構造だけでなく外部のキューティクルにも及びます。
キューティクルは髪を保護する最外層ですが、220 ℃超でキューティクルが亀裂し、ケラチンが熱分解する可能性が指摘されています。
日常的な熱スタイリングでは180 ℃で徐々に損傷を受けていきます。
高温による髪のタンパク質変性について
髪のケラチンタンパク質の変性は130℃(266°F)以上で始まります。
この温度を超えると、髪の色を決定する色素が変化し、ケラチンタンパク質が分解され始めます。
研究によると、水を含む湿潤状態では120-150℃でα‑ヘリックスが不可逆変性を起こし、乾燥毛髪では開始温度はさらに高いことが示されています。
乾燥状態のαケラチン(≈240°C)(Spei and Holzem, 1989)および湿潤状態のαケラチン(≈120~150°C)(Wortmann and Deutz, 1993, Wortmann et al., 2006a)の変性温度は、これらよりも大幅に高いことが観測されています
引用:ScienceDirect Thermal denaturation and structural changes of α-helical proteins in keratins
特に200℃(392°F)以上の温度では、コルテックス内のケラチンタンパク質の変性が始まり、髪の強度と弾力性が失われ、タンパク質が溶けて収縮し始めます。
タンパク質の変性は不可逆的な変化であり、一度変性したケラチンは元の状態に戻ることはありません。
髪のケラチンは130〜160℃の温度範囲でα-ケラチンからβ-ケラチンへの構造遷移が観測されます。
この構造変化は髪の物性に影響を与えますが、β-ケラチンへの移行直後に強度が急激に低下するわけではありません。
髪の弾力性の低下や髪軸の脆弱化は温度依存的に進行するため、130℃以上での加熱には注意が必要です。
キューティクルの損傷と水分喪失のプロセス
キューティクルは髪を保護する鱗のような細胞が重なり合って形成されています。
熱スタイリングツールの過度の使用により、これらのキューティクル細胞が持ち上がり、分離し始めます。
この状態になると、より深い層のケラチン鎖がダメージを受けやすくなります。
水分喪失のプロセスは特に深刻です。
髪は約5-17%(環境条件によって変動)の水分を含んでおり、これがケラチンタンパク質と結合しています。
熱が加わると、髪から自然な油分が奪われ、水分子が蒸発し、髪のタンパク質構造が変化します。
高温により水分が急速に乾燥し、各髪束の構造に影響を与え、キューティクルにひび割れを生じさせることがあります。
【髪質別】ヘアアイロン適正温度はどのくらい?
髪質によって適正な温度設定は大きく異なりますが、適切な温度を選ぶことで、スタイリング効果を得ながら髪へのダメージを最小限に抑えることができます。
髪の太さや強度によって、熱に対する耐性が異なるため、自分の髪質を正しく理解することが重要です。
ただし、髪質に関わらず推奨温度範囲の下限から開始し、望ましい仕上がりが得られる必要最小限の温度で使用することが、髪への熱ダメージを最小化する安全な使用法です。
細い髪・軟毛の方の温度設定(120-140℃)
細い髪や軟毛の方は、髪の中層(コルテックス)が薄く、通常よりも小さいため、髪束の密度が低く、弱い構造をしています。
そのため、特に壊れやすく、高温が加わると損傷を受けやすい特徴があります。
細い髪の方には、120℃から140℃(250°F-300°F)の温度範囲が推奨されています。
この温度範囲は、髪を傷めることなくスタイリング効果を得るのに十分な温度です。
より具体的には、非常に細い髪の場合は300°F(約150℃)を超えないように注意し、理想的には250°F(約120℃)程度から始めることが推奨されています。
普通毛の方の温度設定(140-160℃)
普通毛は最も一般的な髪質で、コルテックスとキューティクル、場合によっては第三層のメデュラを持っています。
この追加層により、より高いストレスのスタイリングや着色に耐えることができます。
普通毛の方には、300°F から350°F(約150℃-175℃)の温度範囲が適しています。
この髪質の方は、350°Fから400°F(175℃-200℃)の範囲でも対応可能ですが、髪の健康を考慮すると、より低い温度から始めることが推奨されます。
太い髪・硬毛の方の温度設定(160-180℃)
太い髪や硬毛は、コルテックス、キューティクル、メデュラの3つの髪の層すべてを持っています。
この髪質は熱やスタイリング、化学的処理に対してより耐性がありますが、乾燥しやすく、特に湿度の高い環境では縮れやすい特徴があります。
太い髪や硬毛の方には、350°Fから400°F(約175℃-200℃)の温度が推奨されています。
非常に太い髪やくせの強い髪の場合は、375°Fから410°F(190℃-210℃)までの温度範囲で使用することを推奨します。
200℃を超える温度では乾燥毛においても不可逆的なダメージが報告されているため、410°F(210℃)を実質的な上限として設定し、それ以上の高温使用は避けるべきです。
ダメージヘアの方の温度設定と注意点
化学処理を受けた髪やダメージヘアは、すでにキューティクルが深刻に損傷しており、熱によるさらなる損傷を受けやすい状態にあります。
ダメージヘアや化学処理を受けた髪には、250°Fから300°F(約120℃-150℃)の低温設定が必須です。
特に注意すべきは、ブリーチや染色を施した髪です。
これらの処理により髪の構造が弱くなっているため、300°F(150℃)以下の温度で使用することが推奨されています。
また、ダメージヘアの方は、使用頻度を極力減らすことが理想的です。
ヘアアイロンの温度調節機能と正しい使用方法
ヘアアイロンの温度調節機能は、髪の健康を守りながら理想的なスタイリングを実現するために不可欠な要素です。
適切な温度設定と正しい使用方法を組み合わせることで、熱によるダメージを大幅に軽減することができます。
温度調節機能付きアイロンの選び方
温度調節機能付きのヘアアイロンを選ぶ際は、幅広い温度範囲を持つ製品を選ぶことが重要です。
一般的なヘアアイロンは212.0°Fから446.0°F(100 ℃-230 ℃)程度の範囲で調節できるものが多いです。
高品質なスタイリングツールは均一加熱・細かい温度設定がパス回数を減らし、結果的に髪へのダメージを抑える可能性があるとされています。
また、インテリジェントな熱制御技術を搭載した製品を選ぶことで、高温を使わずに理想的なスタイルを実現できます。
このような技術により、髪の水分を保ちながら効果的なスタイリングが可能になります。
プレート素材による温度の違いと特徴
プレート素材は熱の伝導性と分配に大きく影響します。
セラミックプレートは熱を均等に分配し、ホットスポットのリスクを減らすため、細い髪から中程度の髪に最適です。
また、縮れを防ぐ効果もあるため、縮れやすい髪の方にも適しています。
一方、チタニウムプレートは素早く加熱し、より長時間高温を維持できるため、太い髪や扱いにくい髪に適しています。
ブラジリアンブローアウトなどの処理を行う場合や、頑固な髪質の方には、チタニウムが推奨されます。
トルマリンコーティングされたツールは、マイナスイオンを放出し、乾燥した髪や損傷した髪に存在するプラスイオンを中和する効果があります。
プレート素材による違いと特徴
プレート素材 | 主な特徴 | おすすめの髪質・用途 |
---|---|---|
セラミック | ・熱を均等に分配 ・ホットスポットができにくい ・縮れを防ぐ効果 | 細い髪、普通~やや縮れやすい髪 |
チタニウム | ・素早く加熱 ・高温を長時間維持 ・頑固な髪にも対応 | 太い髪、扱いにくい髪、ブラジリアンブローアウト等 |
トルマリンコート | ・マイナスイオンを放出 ・髪の静電気や乾燥を防ぐ | 乾燥毛、ダメージ毛 |
ヒートプロテクターの重要性と使用タイミング
ヒートプロテクターは、熱と髪の間にバリアを作ることで髪を保護します。
これらの製品は、熱伝導を遅らせ、熱を均等に分配することで、一箇所に集中的な熱が加わることを防ぎます。
研究によると、最良のヒートプロテクターでも最大で約50%の保護効果しか示さないものの、使用しない場合と比較して大幅にダメージを軽減できることが分かっています。
ヒートプロテクターの使用タイミングは、髪の状態によって異なります。
ブロードライヤーを使用する場合は、タオルドライした湿った髪に適用します。
ストレートアイロンやカーリングアイロンを使用する場合は、完全に乾いた髪に適用することが重要です。
製品を髪全体に均等に行き渡らせるため、適用後にコーミングすることが推奨されています。
温度管理以外の髪ダメージを防ぐポイント
ヘアアイロンによる髪ダメージを防ぐには、温度管理だけでなく、使用方法や頻度、アフターケアなど総合的なアプローチが必要です。
これらの要素を適切に管理することで、髪の健康を維持しながら理想的なスタイリングを楽しむことができます。
使用頻度が多くなれば髪への負担は大きくなる
毎日のヘアアイロン使用は、髪を焼き、ダメージを与える直接的な原因となります。
専門家による経験則に基づく使用頻度の目安では、健康な髪で週2-3回が上限とされ、週1回の使用が安全とする見解もあります。
細い髪や加齢した髪では週1回程度、化学処理を受けた髪(カラーリング、リラクサー、ブリーチ)では2週間に1回以下が推奨されています。
ただし、これらは体系的研究データではなく専門家の経験に基づく指針です。
くせ毛(タイプ3または4)の場合は月に1回、細い髪の場合は週に1回を超えないようにすることが重要です。
過度の使用は、髪の弾力性の喪失、切れ毛、さらには部分的な脱毛につながる可能性があります。
髪が濡れた状態での使用を避ける理由
濡れた髪へのヘアアイロン使用は、「バブルヘア」と呼ばれる深刻なダメージを引き起こします。
髪の繊維には空胞と呼ばれる空気で満たされた空間があり、髪が濡れているときは水分がこれらの空間に入り込みます。
熱が加わると、空胞内の水分とガスが膨張し、髪軸に泡状の変形を形成し、髪が曲がり、破損し、変色する原因となります。
この現象は、髪が175℃以上の温度にさらされたときに発生する可能性があります。
研究によると、125℃以上の高温に長時間さらされた濡れた髪では、熱と蒸発した水が髪の内部に気泡を形成し、歪んだ髪軸を作り出すことが示されています。
175℃以上のヘアドライヤーを使用すると泡髪になることがあります。また、125℃のヘアカーラーを1分間髪に当てると、毛髪繊維に泡が誘発されることもあります。
引用:National Center for Biotechnology Information Bubble Hair and Other Acquired Hair Shaft Anomalies due to Hot Ironing on Wet Hair
バブルヘアのダメージは永久的であり、修復することはできません。
損傷した髪を切り取り、新しい成長を待つ以外に方法はありません。
アイロン後のヘアケア方法
ヘアアイロン使用後の適切なケアは、髪の健康を維持するために不可欠です。
熱スタイリング後は、髪の水分と栄養を補給することが重要です。
通常は週に1回以上、ダメージが大きい場合は週2回程度の深いコンディショニングマスクの使用が推奨されており、失われた水分を補給することができます。
保湿効果の高いヘアケア製品の使用も重要です。
特に多孔質の髪には、リーブインコンディショナー、クリーム、アルガンオイルやホホバオイルなどのオイルを使用することで、水分を封じ込め、髪を柔らかくすることができます。
また、ケラチン、シルク、小麦タンパク質を含む製品を使用することで、髪に必要なタンパク質を補給できます。
- コンディショニングマスク:週1~2回、深く保湿・補修
- 保湿系ヘアケア製品:クリーム、ミスト、リーブインなど
- オイルでの保湿:アルガンオイル、ホホバオイル等で水分を封じ込める
- タンパク質配合製品:ケラチン、シルク、小麦タンパクで髪の補強
トリミングも重要なアフターケアの一部です。
定期的にトリミングを行い、枝毛を除去し、ダメージが髪軸を上に広がるのを防ぐことが推奨されています。
また、髪を洗う頻度を週2-3回程度に抑え、頭皮が自然な油分を生成する時間を与えることで、環境からの影響から髪を保護することができます。
ただし、脂性頭皮や細い髪の場合はより頻繁な洗髪が必要な場合があるなど、頭皮タイプによって調整が必要です。
よくある質問(FAQ)
ヘアアイロンの使用に関して、多くの方が疑問や不安を抱えています。
ここでは、最もよく寄せられる質問について、科学的根拠に基づいてお答えします。
- ヘアアイロンは何度から髪が傷みますか?
-
髪のダメージは130℃(266°F)以上で始まることが研究により示されています。
この温度を超えると、髪の色素の変化やケラチンタンパク質の分解が始まる可能性があります。
ただし、個人の髪質や状態により影響は異なるため、できるだけ低い温度から使用することが推奨されます。
- 毎日ヘアアイロンを使っても大丈夫ですか?
-
毎日の使用は推奨されません。
理想的な使用頻度は2〜3日に1回程度です。
髪質や状態によって異なりますが、健康な髪でも週に1〜2回程度に抑えることで、熱によるダメージを最小限に抑えることができます。
- 温度調節機能がないアイロンの場合はどうすればいいですか?
-
温度調節機能がないアイロンは髪に深刻なダメージを与える可能性が高いため、使用を避けることをお勧めします。
どうしても使用する場合は、ヒートプロテクターを必ず使用し、髪に当てる時間を最小限にすることが重要です。
可能であれば、温度調節機能付きのアイロンへの買い替えを検討してください。
- くせ毛の場合、高温でないとストレートにならないのですが?
-
くせ毛の方は、300°Fから350°F(約150℃-175℃)の範囲で使用することが推奨されています。
高温を使用する前に、適切なヒートプロテクターの使用と、セクションを小さく分けて丁寧にアイロンをかけることで、より低い温度でも効果的にストレートにすることができる場合があります。
まとめ
ヘアアイロンの適正温度は髪質によって大きく異なり、細い髪では120-140℃、普通毛では140-160℃、太い髪では160-180℃が推奨されます。
しかし、温度管理だけでなく、使用頻度の制限、濡れた髪への使用回避、適切なヒートプロテクターの使用、そして丁寧なアフターケアが髪の健康維持には不可欠です。
髪のダメージは累積的であり、一度変性したケラチンタンパク質は元に戻りません。
そのため、予防的なアプローチが最も重要です。
毎回のスタイリング時に適切な温度設定を心がけ、ヒートプロテクターを必ず使用し、使用頻度を最小限に抑えることで、健康的な髪を保ちながら理想的なスタイリングを楽しむことができます。
今後のヘアケアにおいて実践すべきことは、自分の髪質を正しく理解し、それに応じた温度設定を守ること、品質の良いヘアアイロンとヒートプロテクターに投資すること、そして定期的なトリミングと深いコンディショニングトリートメントを取り入れることです。
これらの実践により、美しく健康的な髪を長期的に維持することが可能になります。
ScienceDirect Kinetics of the changes imparted to the main structural components of human hair by thermal treatment
ScienceDirect Thermal denaturation and structural changes of α-helical proteins in keratins
ResearchGate Thermal Transitions in alpha-Keratins
TRI Princeton Hair Heat Protection Claim Support 101
K18 PRO Science Class 17: The science behind heat damage
Biology Reader Protein Denaturation by Heat - Definition, Examples & Mechanism
Seppic What is hair hydration: myths and reality
Byrdie How to Pick the Right Flat Iron Temperature Setting for Your Hair
WIRED The 14 Best Hair Straighteners and Flat Irons We Tested (2025)
sleek'e hair Ceramic vs Titanium Hair Straightener: Which One is Better?
Empire Beauty School Know Your Beauty Tools- Choosing a Flat Iron
Lab Muffin Beauty Science How do heat protectant hair products work?
Byrdie How Often Can You Straighten Your Hair Without Damage? Stylists Break it Down
Curl Centric How Often Should You Flat Iron Your Hair (Without Damaging It)
National Center for Biotechnology Information Bubble Hair and Other Acquired Hair Shaft Anomalies due to Hot Ironing on Wet Hair
Cosmopolitan 16 Best Deep Conditioners for Every Hair Type (Tested and Reviewed for 2024)
Healthline How to Wash Your Hair, Because It Turns Out There's (Kinda, Sorta) a Right Way to Do It