更年期で髪が薄くなった?女性ホルモンの変化と効果的な対策法

更年期で髪が薄くなった?女性ホルモンの変化と効果的な対策法

更年期を迎えた多くの女性が、分け目の広がりや髪全体のボリューム不足に悩んでいます。

朝の髪のセットに時間がかかるようになった、頭頂部が透けて見える、抜け毛が増えた…こうした変化は、更年期における女性ホルモンの急激な減少が大きく関わっています。

更年期で薄毛になる理由
  • 女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の急激な減少による毛髪成長期の短縮
  • 相対的な男性ホルモン(アンドロゲン)優位による毛包への悪影響
  • 毛包内アロマターゼ活性低下とホルモンバランスの男性化
  • エストロゲン減少による頭皮血流低下と栄養供給不足
  • 毛包幹細胞の活性化阻害による新しい髪の生成能力低下

更年期による薄毛は適切な対策により改善が期待できます。

本記事では、医学的根拠に基づいて更年期と薄毛の関係を解説し、今すぐ始められる対策から専門的な治療法まで、幅広い選択肢をご紹介します。

この記事でわかること
  • 更年期における女性ホルモンの変化と薄毛のメカニズム
  • 薄毛の進行度を見分ける具体的なチェック方法
  • 栄養改善や生活習慣の見直しなど、自宅でできる7つの対策
  • ホルモン補充療法やミノキシジルなど医療機関での治療選択肢
  • 更年期薄毛に関するよくある疑問への回答
目次

更年期で髪が薄くなる原因は女性ホルモンの変化にある

更年期における薄毛の最大の要因は、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの急激な減少にあります。

日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳前後とされており、その前後約10年間が更年期にあたります。

この時期、卵巣機能の低下により女性ホルモンの分泌が著しく減少し、髪の成長サイクルに大きな影響を与えます。

エストロゲンは毛髪の成長期を延長し、太く健康な髪を維持する重要な役割を担っています。

更年期に入ると、このエストロゲンが減少することで毛髪の成長が抑制され、細く弱々しい髪が増え始めます。

同時に、相対的に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が強くなり、これが薄毛をさらに進行させる要因となります。

更年期の薄毛は「びまん性脱毛症」や「女性型脱毛症(FAGA/FPHL)」と呼ばれ、男性型脱毛症とは異なり、頭部全体的にぼんやりと薄くなっていくのが特徴です。

この変化は徐々に進行するため、初期段階では気づきにくいことも多く、適切な対策の開始が遅れがちになります。

エストロゲン減少が髪に与える3つの影響

エストロゲンの減少は、髪に対して複数の経路で悪影響を及ぼします。

第一に、毛包内でのアロマターゼ活性が低下し、アンドロゲンからエストロゲンへの変換が減少します。

これにより、毛包周辺でのホルモンバランスがさらに男性ホルモン優位に傾きます。

第二に、エストロゲンは血管拡張作用を持つため、その減少により頭皮への血流が低下する可能性が指摘されています。

十分な栄養と酸素が毛包に届かなくなることで、髪の成長に必要なエネルギー産生が阻害されます。

第三に、現時点で臨床エビデンスは限定的ですが、エストロゲンの減少は毛包幹細胞の活性化を妨げ、新しい髪の生成能力を低下させます。

これらの複合的な影響により、髪は次第に細くなり、成長速度も遅くなっていきます。

更年期における髪の成長サイクルの変化とは

健康な髪の成長サイクルは、成長期(アナゲン)、退行期(カタゲン)、休止期(テロゲン)の3つの段階を繰り返します。

通常、頭髪の約80-90%が成長期にあり、休止期の髪は10-20%程度です。

更年期になると、このバランスが大きく崩れます。

個人差は大きいですが、エストロゲンの減少により成長期が短縮し、休止期が延長されることで、休止期の髪の割合が増加します。

結果として、髪の密度が低下し、全体的なボリュームが減少します。

さらに、新しく生えてくる髪も以前より細く、成長速度も遅くなるため、薄毛の印象がより強くなります。

この変化は緩徐に進行するため、定期的な観察が重要です。

年齢別に見る女性の薄毛パターンの特徴

40代前半では、まだ月経がある時期でも、すでにホルモンの変動が始まっています。

この時期の薄毛は、主に分け目の広がりや髪のハリ・コシの低下として現れることが多く、全体的な薄毛はまだ目立ちません。

45-55歳の更年期真っ只中では、頭頂部を中心とした薄毛が顕著になります。

特に分け目から頭頂部にかけての地肌が透けて見えるようになり、髪全体のボリュームも明らかに減少します。

60歳以降の閉経後期では、薄毛はさらに進行し、FPHLの疫学研究によると30–40%程度の女性が何らかの髪の変化を自覚するとされています。

女性の脱毛症の有病率は高く、 30歳までに12%、49歳までに25%、60~69歳の女性では30~40%が脱毛を経験します。

引用:International Society of Hair Restoration Surgery (ISHRS) Androgenetic Alopecia: A Guide to Pattern Hair Loss 

この時期には、薄毛に加えて髪質の変化(パサつきや白髪の増加)も顕著になります。

更年期の薄毛を見分ける5つのサインと進行度チェック

更年期による薄毛は徐々に進行するため、早期発見が重要です。

日常生活の中で観察できる具体的なサインを知ることで、適切なタイミングで対策を始めることができます。

更年期の薄毛には特徴的なパターンがあり、男性型脱毛症とは異なる進行を示します。

女性の場合、前頭部の生え際は比較的保たれることが多く、主に頭頂部から全体的に薄くなっていきます。

進行度を正確に把握することで、セルフケアで対応可能な段階なのか、専門医の診察が必要な段階なのかを判断できます。

以下の5つのサインに注意を払い、複数該当する場合は早めの対策を検討しましょう。

分け目の広がり・頭頂部の変化を確認する方法

分け目の広がりは、更年期薄毛の最も早期に現れるサインの一つです。

鏡を使って頭頂部を確認し、分け目の幅が以前より広くなっていないか定期的にチェックしましょう。

頭頂部の変化を客観的に確認するには、定期的な写真撮影が有効です。

同じ照明条件、同じ角度で月1回程度撮影し、変化を記録します。

特に頭頂部を真上から撮影した写真は、地肌の透け具合を確認するのに適しています。

また、髪を結んだ時のポニーテールの太さの変化も重要な指標となります。

以前と同じゴムで結んだ時に、巻き数が増えている場合は髪の量が減少している可能性があります。

客観的な評価には、皮膚科でのトリコスコピーも推奨されます。

抜け毛の量と質から判断する薄毛の進行度

正常な抜け毛は1日50-100本程度とされていますが、更年期にはさらに多く抜ける場合もあります。

シャンプー時の抜け毛を集めて数を数えることで、客観的な評価が可能です。

ただし、季節の変わり目などは一時的に増加することもあるため、2-3週間の平均を見ることが大切です。

抜け毛の質も重要な判断材料です。

健康な抜け毛は太さが均一で、毛根部分がマッチ棒の先のように膨らんでいます。

一方、更年期の影響を受けた抜け毛は、毛根が小さく、髪自体も細く短いことが特徴です。

ただし、これらの違いは非常に小さく、普通の目で見ただけでは区別することができません。

専用の顕微鏡を使って拡大しないと、はっきりと見分けることは難しいです。

抜け毛の量・質による薄毛進行度チェックリスト
  • 正常:1日50〜100本程度の抜け毛
  • 軽度:抜け毛の増加、分け目がやや広がる
  • 中等度:頭頂部の地肌が透けて見える
  • 重度:頭頂部全体に著明な薄毛がみられる

進行度の目安として、軽度では抜け毛の増加と分け目の若干の広がり、中等度では頭頂部の地肌が透けて見える、重度では頭頂部全体の著明な薄毛と考えられます。

中等度以上の場合は、専門医への相談を推奨します。

更年期以外の薄毛原因との見分け方

更年期による薄毛と他の原因による薄毛を見分けることは、適切な治療選択のために重要です。

甲状腺機能異常による薄毛は、全身症状(疲労感、体重変化、冷え)を伴うことが多く、血液検査で診断可能です。

鉄欠乏性貧血による薄毛は、顔色不良、息切れ、爪の変形などを伴います。

特に月経過多の既往がある女性では、鉄欠乏が薄毛の原因となることがあります。

フェリチン値が40μg/L未満の場合、薄毛との関連が指摘されています。

抗アンドロゲン剤である酢酸シプロテロンとエチニルエストラジオールで治療した患者は、血清フェリチンが 40 マイクログラム/リットルを超えると最もよく反応します。

引用:National Center for Biotechnology Information The importance of adequate serum ferritin levels during oral cyproterone acetate and ethinyl oestradiol treatment of diffuse androgen-dependent alopecia in women

円形脱毛症は、境界明瞭な脱毛斑が突然現れるのが特徴で、更年期のびまん性脱毛(FPHL/FAGA)とは明確に区別できます。

ストレス性の急性休止期脱毛は、特定のストレスイベント(手術、出産、精神的ショック)の2-3か月後に急激な脱毛が起こります。

今すぐ始められる更年期薄毛の改善対策7選

更年期の薄毛は、日常生活の工夫により改善が期待できます。

医療機関での治療と並行して、または軽度の段階では、以下の対策を実践することで髪の健康を維持・改善できる可能性があります。

これらの対策は、即効性は期待できませんが、3-6か月継続することで効果を実感できることが多いです。

複数の対策を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

特に重要なのは、継続性と総合的なアプローチです。

科学的根拠に基づいた7つの対策を、実践しやすい順に紹介します。

どれか一つから始めて、徐々に取り入れる対策を増やしていくことをお勧めします。

更年期薄毛の改善対策7選
  1. 洗髪方法の見直し:やさしく頭皮マッサージ/38-40度のぬるめのお湯を使用
  2. ヘアケア後の保湿と摩擦・熱対策を徹底する:コンディショナー等で保湿/ドライヤーは冷風を活用
  3. 過度な物理的刺激を避ける:髪をきつく結ばない/過剰なブラッシングを控える
  4. 髪の成長を促す栄養素と食事の工夫:タンパク質、含硫アミノ酸、鉄分、亜鉛などを意識的に摂取
  5. 質の良い睡眠を確保する:規則正しい生活リズム/十分な睡眠時間/寝る前のスマホやテレビを控える
  6. 適度な運動習慣を取り入れる:週3-4回の有酸素運動で全身の血行を促進
  7. ストレス管理を徹底する:深呼吸・瞑想・趣味の時間を設けて心身のバランスを整える

頭皮環境を整えるヘアケア方法の見直し

適切なヘアケアは、頭皮環境を整え、既存の髪を守る重要な要素です。

更年期以降の頭皮環境は個人差が大きいため、シャンプーの頻度は皮脂・フケ量に応じて調整しましょう。

洗髪時は、38-40度のぬるめのお湯を使用し、頭皮を優しくマッサージするように洗います。

爪を立てずに指の腹で円を描くように洗うことで、血行を促すと考えられています。

シャンプー後は必ずコンディショナーやトリートメントで保湿し、髪の摩擦によるダメージを防ぎます。

ドライヤーの使用は最小限に留め、使用する際は冷風モードを活用します。

熱によるダメージは髪を脆弱にし、切れ毛や抜け毛の原因となります。

また、きつく髪を結ぶヘアスタイルは避け、頭皮への物理的ストレスを軽減することも大切です。

髪の成長を促す栄養素と食事の工夫

髪の健康には、特定の栄養素が重要な役割を果たします。

タンパク質は髪の主成分であるケラチンの原料となるため、1日あたり体重1kgあたり0.9-1.0gの摂取が推奨されます。

一般成人の推奨量は0.85 g/kgですが、筋量維持目的で〜1.0 g/kgを目安にすることもあります。

特に、システインとメチオニンという含硫アミノ酸が豊富な食品(鶏肉、魚、大豆製品)を意識的に摂取しましょう。

鉄分は毛包への酸素供給に不可欠で、特に閉経前の女性では1日10 mg前後の摂取が目標とされ、欠乏リスクが高い人は医療的な補充が推奨されます。

赤身肉、レバー、ほうれん草、レンズ豆などが良い供給源です。

ビタミンCと一緒に摂取することで吸収率が向上します。

髪の成長に重要な栄養素と代表的な食材

栄養素・成分主な役割代表的な食材推奨摂取量の目安摂取時のポイント
タンパク質ケラチン(髪の主成分)の原料鶏肉、魚、大豆製品0.85〜1.0g/kg体重体重や年齢で調整
システイン・メチオニン含硫アミノ酸、毛髪の材料鶏肉、魚、大豆製品
鉄分毛包への酸素供給赤身肉、レバー、ほうれん草、レンズ豆女性は10mg/日目安ビタミンCと一緒で吸収率UP
亜鉛毛包の正常な機能維持牡蠣、牛肉、かぼちゃの種、カシューナッツ女性は8mg/日目安過剰摂取は避ける、サプリは医師相談

亜鉛は毛包の正常な機能維持に必要で、女性では1日8mg程度の摂取が推奨されます。

牡蠣、牛肉、かぼちゃの種、カシューナッツなどに豊富に含まれています。

ただし、過剰摂取は銅の吸収を阻害するため、サプリメントを使用する場合は医師の指導を受けることが重要です。

生活習慣の改善で髪の健康を取り戻す

質の良い睡眠は、成長ホルモンの分泌を促し、髪の成長をサポートします。

毎日同じ時間に就寝・起床し、7-9時間の睡眠を確保することが理想的です。

就寝前のスマートフォンやテレビの使用を控え、寝室を暗く涼しく保つことで睡眠の質が向上します。

適度な運動は、全身の血行を改善し、頭皮への栄養供給を促進します。

週3-4回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、水泳、ヨガなど)が推奨されます。

運動はストレス解消にも効果的で、コルチゾールレベルの低下により髪の健康維持に貢献します。

ストレス管理も重要な要素です。

慢性的なストレスは、髪の成長サイクルを乱し、休止期脱毛を引き起こす可能性があります。

深呼吸、瞑想、趣味の時間を設けるなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。

医療機関での更年期薄毛治療の選択肢と費用目安

更年期の薄毛が中等度以上に進行している場合、または生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合は、医療機関での治療を検討する価値があります。

現在、複数の治療選択肢があり、個々の状況に応じて最適な治療法を選択できます。

治療を開始する前に、血液検査により甲状腺機能、鉄欠乏、その他のホルモン異常を除外することが重要です。

これらの基礎疾患がある場合は、まずその治療を優先します。

以下では、主要な治療法について、効果、安全性、費用の観点から詳しく解説します。

治療選択は医師との十分な相談の上で決定することが大切です。

ホルモン補充療法(HRT)の効果と注意点

ホルモン補充療法(HRT)は、減少した女性ホルモンを補充することで更年期症状を改善する治療法です。

薄毛に対しても一定の効果が期待でき、特にエストロゲンとプロゲステロンの併用療法が推奨されることが多いです。

HRTによる薄毛改善のメカニズムは、エストロゲンによる毛包の成長期延長、血流改善、そしてアンドロゲンの相対的な影響の軽減にあります。

ただし、毛髪改善は副次的効果であり、主要目的での適応は推奨されません。

また、HRTには乳がんリスクの若干の増加、血栓症リスクなどの副作用があるため、慎重な適応判断が必要です。

特に、乳がんの既往歴、血栓症の既往、重度の肝機能障害がある場合は禁忌となります。

費用は価格帯に幅がありますが、月額3,000-10,000円程度で、定期的な検査費用も必要です。

薄毛治療薬と外用薬の種類・効果

ミノキシジル外用薬は、更年期薄毛に対する第一選択薬の一つです。

日本では女性用として1%濃度のみ承認、2%濃度は未承認(個人輸入や自由診療)とされており、1日2回頭皮に塗布します。

血管拡張作用により毛包への栄養供給を改善し、成長期を延長する効果があります。

男性を対象としたミノキシジル外用薬5%の臨床試験では、使用開始後16-24週で有意な改善が認められ、継続使用により効果が維持されます。

臨床試験では、16週間の投与後、約35%の被験者で発毛促進効果が認められています

引用:National Center for Biotechnology Information Comparative Clinical Study Evaluating the Efficacy and Safety of Topical 5% Cetosomal Minoxidil and Topical 5% Alcohol-Based Minoxidil Solutions for the Treatment of Androgenetic Alopecia in Indian Men

ただし個人差があり、効果を実感するためには継続使用が必須です。

副作用として、初期脱毛(使用開始後2-8週)、頭皮のかゆみ、接触性皮膚炎などがありますが、多くは軽度で一過性です。

市販薬で月額3,000-5,000円程度です。

その他の治療薬として、スピロノラクトン(抗アンドロゲン作用)やフィナステリド(5α還元酵素阻害薬)が使用されることもありますが、これらは適応外使用となり、医師の慎重な判断が必要です。

副作用として、低血圧・月経不順などが報告されています。

専門クリニックでの治療プログラムの実際

専門クリニックでは、複数の治療法を組み合わせた包括的なプログラムが提供されています。

代表的な治療として、マイクロニードリング(微小針療法)があります。

頭皮に微細な穴を開けることで、成長因子の産生を促し、外用薬の浸透も向上させます。

臨床研究では、週1回のマイクロニードリングとミノキシジル併用により、ミノキシジル単独使用と比較して有意に高い発毛効果が示されています(施術頻度はクリニックごとに調整されます)。

12週間の治療で、併用群では平均91.4本/cm²の増加に対し、単独群では22.2本/cm²の増加でした。

Dhuratらの研究によると、 12週目における毛髪数の平均増加数は、マイクロニードリング群の方がミノキシジル群よりも有意に大きかった(91.4 vs. 22.2、P = 0.039)

引用:Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery (JCAS) A Randomized Controlled, Single-Observer Blinded Study to Determine the Efficacy of Topical Minoxidil plus Microneedling versus Topical Minoxidil Alone in the Treatment of Androgenetic Alopecia

ただし、これは男性対象研究の結果であり、女性での効果検証はエビデンスが不足しています。

PRP(多血小板血漿)療法も選択肢の一つです。

患者自身の血液から血小板を濃縮し、頭皮に注入することで成長因子を供給します。

これらの治療は保険適用外で、効果は症例によって差があります。

マイクロニードリングは1回10,000-30,000円、PRP療法は1回50,000-100,000円程度の費用がかかります。

よくある質問(FAQ)

更年期の薄毛に関して、多くの女性が抱える疑問や不安について、医学的根拠に基づいてお答えします。

これらの情報は一般的な指針であり、個人差があることをご理解ください。

更年期の薄毛は治りますか?

更年期の薄毛は、適切な治療により改善が期待できますが、完全に元の状態に戻ることは難しい場合があります。

早期に対策を開始することで、より良い結果が期待できます。

治療効果には個人差があり、遺伝的要因、薄毛の進行度、全身の健康状態などが影響します。

多くの場合、複数の治療法を組み合わせることで、満足できる改善が得られます。

ただし、治療を中止すると徐々に元の状態に戻る可能性があるため、維持療法が必要になることもあります。

何歳頃から更年期による薄毛が始まりますか?

更年期による薄毛は、個人差が大きいものの、多くの場合40代後半から始まります。

日本人女性の平均閉経年齢が50.5歳であることから、その5-10年前から徐々に変化が現れることが一般的です。

早い方では40代前半から髪質の変化を感じ始め、50代で薄毛が顕著になることが多いです。

ただし、遺伝的要因や生活習慣により、30代後半から症状が現れる場合もあります。

市販の育毛剤は更年期の薄毛に効果がありますか?

市販の育毛剤の中で、医学的に効果が証明されているのはミノキシジル配合製品です。

日本では女性用として1%および2%濃度の製品が販売されており、適切に使用すれば一定の効果が期待できます。

その他の育毛剤については、科学的根拠が不十分なものが多いのが現状です。

購入前に成分を確認し、誇大広告に惑わされないよう注意が必要です。

効果を実感するまでには最低3-6か月の継続使用が必要です。

薄毛が気になり始めたら、いつ病院に行くべきですか?

以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

3か月以上抜け毛が続いている、頭頂部の地肌が明らかに透けて見える、急激な脱毛がある、他の更年期症状も強い、市販薬で3-6か月使用しても改善しない場合です。

皮膚科、婦人科、または薄毛専門クリニックで相談できます。

早期の診断と治療開始により、より良い結果が期待できるため、悩む前に専門医に相談することが大切です。

まとめ|更年期の髪の悩みと向き合うために

更年期による薄毛は、エストロゲンとプロゲステロンの急激な減少が主な原因であり、多くの女性が経験する自然な変化です。

しかし、適切な対策により、その進行を遅らせ、改善することが可能です。

まず取り組むべきは、バランスの良い食事、質の良い睡眠、適度な運動、ストレス管理といった生活習慣の改善です。

特に、タンパク質、鉄、亜鉛などの栄養素を意識的に摂取し、頭皮に優しいヘアケアを心がけることが重要です。

これらの対策は、3-6か月継続することで効果が期待できます。

生活習慣の改善だけでは不十分な場合は、医療機関での治療を検討しましょう。

ミノキシジル外用薬、ホルモン補充療法、マイクロニードリング療法など、様々な選択肢があります。

早期に専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけることで、髪の健康を取り戻すことができます。

更年期は人生の新たなステージです。

適切なケアで、自信を持って過ごせるよう、今日から一歩を踏み出してみませんか。

参考サイト・参考文献

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National Center for Biotechnology Information Female Pattern Hair Loss—An Update

National Center for Biotechnology Information Skin, hair and beyond: the impact of menopause

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GoodRx Experiencing Hair Loss Due to Menopause? Here’s What to Do About It

ScienceDirect Menopause and hair loss in women: Exploring the hormonal transition

National Center for Biotechnology Information Promotion of anagen, increased hair density and reduction of hair fall in a clinical setting following identification of FGF5-inhibiting compounds via a novel 2-stage process

National Center for Biotechnology Information Female pattern hair loss: A clinical, pathophysiologic, and therapeutic review

International Society of Hair Restoration Surgery (ISHRS) Androgenetic Alopecia: A Guide to Pattern Hair Loss

American Academy of Dermatology Do you have hair loss or hair shedding?

National Center for Biotechnology Information The importance of adequate serum ferritin levels during oral cyproterone acetate and ethinyl oestradiol treatment of diffuse androgen-dependent alopecia in women

National Center for Biotechnology Information Serum ferritin and vitamin d in female hair loss: do they play a role?

更年期ラボ(大塚製薬株式会社) 毛髪の衰え

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National Center for Biotechnology Information Protein intake per day and at each daily meal and skeletal muscle mass declines among older community dwellers in Japan

National Center for Biotechnology Information Growth Hormone and the Human Hair Follicle

National Institute of Child Health and Human Development (NICHD) How much sleep do I need?

World Health Organization (WHO) Physical activity. WHO Fact Sheet

World Health Organization (WHO)  Physical activity. WHO BeHealthy Initiative

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)フィナステリド承認審査資料

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)一般用医薬品関連資料

National Center for Biotechnology Information Comparative Clinical Study Evaluating the Efficacy and Safety of Topical 5% Cetosomal Minoxidil and Topical 5% Alcohol-Based Minoxidil Solutions for the Treatment of Androgenetic Alopecia in Indian Men

National Center for Biotechnology Information Telogen Effluvium: A Review

National Center for Biotechnology Information The Efficacy and Safety of Oral Spironolactone in the Treatment of Female Pattern Hair Loss: A Systematic Review and Meta-Analysis

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)フィナステリド錠添付文書

Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery (JCAS) A Randomized Controlled, Single-Observer Blinded Study to Determine the Efficacy of Topical Minoxidil plus Microneedling versus Topical Minoxidil Alone in the Treatment of Androgenetic Alopecia

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