column院長コラム

気にしたことありますか?~生理の量のはなし~

分かりにくい他人との差

そこで出血量の定義です。

自分の出血量が多いのか少ないのか?

あまり人と比べることもありませんので、わからないことのほうが多いものです。

逆に言えば、量に関して意識したことがない方は、さほど問題はないのかもしれません。

ですが、40才前後から『最近量が減ってきて大丈夫かしら?』と少し心配になる方も増えてきます。

また逆に量が増えてきて困っているという方もあります。

昔からずっと多いという方もおられるでしょう。

でも、その出血量が病的なレベルなのかどうか、なかなかわかりませんよね。

多すぎる?少なすぎる?

そこで出血量の定義です。

1周期の総出血量として、20-140ml が正常とされています。

20ml以下を過小月経、140ml以上を過多月経といいます。

『ん?そんなの量ったことないし。』という声が聞こえてきそうですね。


ママにわかりやすく、大さじ1杯から10杯ぐらいの間・・・あれ、よけいわからない?

過小月経は心配になることはあっても、日常生活で困ることはないでしょう。

ですが、過多月経は『日常生活に支障をきたすレベルの出血』と考えるのがわかりやすいと思います。

ナプキンが1時間もたなかったり、血のかたまりがごろごろ出てきたり、寝てる間にあふれたり。

さらに、出血量が多い状態が続くと貧血になってきます。

そうなると、めまいやたちくらみ、疲れやすいなどの症状が出てきます。


しかし、毎月のことですので『まあこんなものか』と受診されない方も結構おられます。

ようやく受診されて調べてみると貧血がひどく、正常の半分以下という方もおられます。

毎月、毎月少しずつの変化ですので、体は慣れていき、意外とやっていけてしまうのです。

男ならぶったおれています。

やっぱり女性は強いです。

もちろん、いくら女性が強いからといって、この状態を続けるのはよくありません。

原因と治療

過多月経の原因は、器質的なもの、機能的なもの、内科的なものにわかれます。

器質的なものとは、子宮に何かあるということです。

代表的なものが、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、などです。

まれに悪性疾患が原因のこともあります。

機能的なものとは、子宮には何もなくホルモン的な問題で出血量が増えているものです。

内科的なものとは、血が止まりにくくなる血液の病気や、そのような薬(抗凝固剤などです)を服用している場合です。



さて、その治療です。

これは原因によって様々です。

ざっくりまとめると、

①手術

②ホルモン療法

③止血剤や貧血の治療

④内科的な原因疾患の治療

となります。



どれを選択するかは、今後妊娠をどう考えるかがポイントになってきます。

a.今すぐ妊娠したい

b.今は希望しないけど今後いつかは妊娠したいと思っている

c.もう妊娠はしたくない



どう思っているのかで治療法も変わっていきます。

上記の①から④とa~cの妊娠の希望を組み合わせて考えると、選択肢は非常に多くなります。

ここでは書きれませんので、最近の話題を少し紹介いたします。



例えば子宮筋腫などがあり、今後妊娠を希望しない場合は、手術を選択することが多くなります。

以前は開腹手術が多かったのですが、最近では腹腔鏡による子宮全摘術が増えていて、負担の少ない手術ができるようになっています。

また筋腫の位置によっては経膣的な内視鏡のみで切除することも可能です。

2012年には『マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)』という方法が保険適応になりました。



これは子宮の内膜を焼くことによって出血量を減らす方法です。

マイクロ波って原理的には電子レンジです。

チンッてほど簡単なわけではありませんが、手術よりはるかに負担が少ない方法です。

この方法は妊娠を希望される方には適応になりません。



2014年9月に『IUS(Intrauterine System)』が保険適応になりました。

これは以前から子宮内に挿入する避妊リングとして販売されていたものです。

リングといってもT字型をしていて、そこから黄体ホルモンというホルモンを放出するようになっています。

その黄体ホルモンが子宮の内膜を薄くし、出血量を減らしていきます。

ホルモンの放出は5年間続きますので、一度挿入すると5年間効果が持続します。

こちらも妊娠を希望される方には適応になりません。

快適に過ごせる選択を!

このように新しい治療法もいろいろと出ており、今まで以上に選択肢が広がっています。

『普通と思ってたけど、実は私の量おおいんとちゃう?』と思われた方。

今までがまんされてた方。

一度産婦人科を受診してみてください。

快適に日々を過ごす方法がきっと見つかると思います。

よりよい治療法を選択するためのリスクとベネフィット

日々の選択の数々

今回は治療方法の選択についてのお話です。

私たちは生活をしていく中で、毎日多くのことを選択しています。

晩御飯なににする?お肉は外国産にする?

高いけど国産にする?お休みはどこに行こう?

そうだ車でUSJにいこう!一番でハリーポッターからいこう!

などなど。


毎日小さいけれど多くの選択をして生きていきます。

選択の結果、良い結果になることもあれば悪い結果になることもあります。

やっぱり高いけど国産のほうがおいしくて安全な気がするとか。

特にチキンナゲット。

高速大渋滞でついたら夕方やん。電車で行ったらよかったなぁとか。


その対局として、極限での選択をせまられることはあまりありません。

地震などの大きな災害や、事故に直面したときに、選択によっては命にかかわる事態になることもありますが、みんながみんな経験することではありません。

病気になった時の選択

そこまで極限の状況ではないけれども、多かれ少なかれ命にかかわる選択をする必要があるのが、病気になったときです。

病気になって、何も治療しなければ命を落としたり、将来にわたって動けなくなったりすることがあるかもしれません。そこまでいかなくても、ずっと痛みを我慢する生活になるかもしれません。


そうならないように、病院に行かれると思います。

病院ではそれに対して、手術や薬による治療を提案します。

例えば、帝王切開で出産をされたママもおられると思います。

その時の医師の説明を覚えておられますか?

出血や感染、血栓症(血管が詰まる病気です)などのリスクの説明があったと思います。
でも手術を受けることのよってそれを上回るベネフィットがあるので手術を選択されたと思います。そして元気な赤ちゃんを手にするという大きな大きなベネフィットを得られたと思います。


がんの手術や抗がん剤の治療を行うときもリスクやベネフィットの説明を聞いたうえで治療法を選択することになります。最近ではがんを治療するなというような本がベストセラーになったりもしています。

それも一つの選択肢です。(私は正しいとは思いませんが・・・)


このような命にかかわる病気ではなくても、日常的によく使われる薬でも常にリスクはあります。
副作用のない薬はありません。薬によってはちょっと気分が悪くなったりすることがあります。でもそれは、その時だけで後に何かを残すことはあまりありません。
こういう副作用はあまり問題視されません。

正しい選択・・リスクとベネフィット

しかし、十万分の一、百万分の一の確率で死亡したり、それに準ずる状態になるとすればどうでしょう?

そのリスクを許容できる人と、できない人に分かれると思います。

リスクを許容したうえで病気から解放されるか、許容せずに病気をうけいれて生活するかの選択が必要になります。
これはどちらの選択も正しいと思います。大切なことは選択のための情報をしっかりと把握することです。


今はネットでいろいろな情報を得ることができますが、専門家である医師の説明が一番です。
逆にいえば、そこの説明がしっかりとできる医師がよい医師であるということです。
そのうえで、リスクを減らす努力をし、万が一問題がおきたら迅速に対応することができる医師が最高ということになります。


難病をみごとに治す医師に注目がよく集まりますが、多くの医師は上記のことを地味にこつこつと行っています。
実際の医療機関で行われる医療行為はベネフィットが圧倒的に大きいものがほとんどです。

もちろん中にはシビアな選択をしなければいけない時もありますが。

治療を開始するにあたって、または治療中でも、不安や心配があれば担当医にリスクについて尋ねてみてください。
ベネフィットは理解しやすいですから。

それが自分の中の許容範囲ならば、ぜひその治療を受けてください。
許容範囲でなければ、別の方法を探してください。


今回はよりよい治療法を選択するためのリスクとベネフィットのお話でした。
治療方法に迷われた時はこのような考え方で選んでみてください。
このお話があなたのよりよい選択の一助になれば幸いです。

実は困っておられる方も多い「おりもの」について


おりものの異常

今回のコラムはありふれているけど、実は困っておられる方も多い、「おりもの」についてです。
「おりものが多い」 「かゆみがある」 「においが気になる」などの症状は多くの方が経験されたことがあると思います。
病気なのかどうなのかもよくわからないという方も多いと思います。
実はおりものの異常を訴えて産婦人科を受診される方はとても多いのです。
おりものの異常は大きくわけて

1. 子宮からの分泌液が増えている場合

排卵の時期には子宮頸管(子宮の入り口の部分です)から頸管粘液の分泌が増えてきます。妊娠にむけて、精子が子宮頸管を通過しやすくするためです。
その分泌量には個人差があり、その量が多い方はおりものが増えてきたと感じることと思います。これは正常の現象ですので、全く治療の必要がありません。
「でも今は妊娠の希望がないし、なんとかならないかな?」そのような場合は、避妊もかねて、ピルの使用をおすすめします。排卵を抑制し、排卵期の頸管粘液の分泌も抑制します。

2. 膣の中の常在菌の量が普段より増えたり、バランスを崩している場合

膣の中にはもともと、常在菌である乳酸桿菌など多くの種類の菌が存在し、その菌種間で平衡関係が保たれています。
このような菌をまとめて正常細菌叢と呼びます。たとえば、乳酸桿菌は膣の上皮細胞に含まれるグリコーゲンを分解し、膣内を酸性に保ち外部からの病原菌の侵入を防いでいます。
このように、正常細菌叢は生体防御の役割を果たしています。また逆に何らかの原因で菌の間の平衡関係がくずれると、いろいろな問題を起こします。
おりものが増えたり、においが気になったり、かゆみを感じたりします。
体調を崩したり、生理前だったり、少しのきっかけで起きることがあります。ですので、対処法として体調を整えることが大切ですが、必要に応じて膣内に抗生剤を使用します。
「体調を整える」ことは口で言うのは簡単ですが、実際は難しいですよね。ストレスを感じずに、規則正しい生活が毎日できればいいのですが・・・

3. 腸や、皮膚の表面などいる常在菌が膣のなかで増えている場合

菌の種類は異なってきますが、基本的には2と同じ状態です。
この場合、抗生剤の膣内投与が基本です。症状がなければ積極的に治療しなくてもよいこともあります。

4. 性病の感染がある場合

代表的な性感染症に、クラミジア、淋菌、トリコモナスなどがあります。
クラミジア、淋菌は症状がないことも多い菌ですが、放置しているとひどい腹膜炎や不妊症の原因になりますので、症状がなくても必ず治療する必要があります。
治療は抗生物質を内服することが一般的です。

新しい治療法!

以上のようにおりものの異常の原因は様々ですが、対処法が限られています。
ほぼ、抗生剤や抗真菌剤の使用一択です。ですので、再発を繰り返す場合や、症状があっても検査結果に異常がなかった場合の対応が難しくなります。
そこでヨーロッパでは乳酸菌のカプセルを使用し、膣内の環境を整えて、おりものをコントロールする方法が始められています。
今までは増えてきた雑菌を抗生剤で抑えるのみでしたが、これは乳酸菌により膣内の酸性環境を維持することによって雑菌が増えるのを防ぐというやりかたです。
プロバイオティックスという考え方です。コマーシャルで渡辺謙さんがやっているあれです。
それの膣内版と考えていただければわかりやすいと思います。今後が期待できる治療法です。(日本では発売されていませんが、当院では処方可能です。)
ささいなことのようで、結構煩わしいのがおりものの異常です。早めのご相談を!

痛い!生理痛のはなし

生理痛

前回までは女性ホルモンとその周期の異常についてのお話でした。
今回は、多くの皆さんが経験しているであろう生理痛のお話です。
痛いのっていやですよね。それが毎月あるならなおさらです。
生理前から痛みの出るかたは月の半分近く痛かったりもします。でも、日本人はがまん強いかたが多いようです。
がまんして、がまんして、子育てや、お仕事がんばっておられる方がたくさんおられます。

とある、働く女性の健康に関する調査によると、痛み止めを飲んでも痛くて仕事を休む方が2.8%。
痛み止めを飲めばなんとか仕事はできる方が25.8%。

1/4 以上の方が大変な思いをして働いておられます。子育て中のママも同様でしょう。
逆に子育てって休むわけにもいきませんから、よけい大変かもしれません。

月経困難症

生理直前から生理中の不快な症状。
腹痛、腰痛、膨満感、はきけ、頭痛、疲労、いらいらなどを「月経随伴症状」といいます。それが、日常生活も困難なほどひどくなる状態を「月経困難症」といいます。
その中心が下腹部痛です。痛み止めを飲んでも動けなかったり、救急車を呼ぶような事態になる方もおられます。

月経困難症は「機能性月経困難症と「器質性月経困難症」の2つに分類されています。
急に漢字が並んできました。
平たく言うと前者は、『なんにもないのにめっちゃ痛い』、後者は『なんかあるからめっちゃ痛い』状態です。

まず、『なんにもないのにめっちゃ痛い』場合についてです。
生理とは、妊娠が成立しなかった場合に子宮内膜(子宮の中の受精卵が着床する部分の膜です)が一気にはがれ落ちてくる現象です。
その時にその内膜から”プロスタグランジン”という子宮を収縮させる物質がでます。
そうやって血が止まっていきます。合目的です。

ヒトの体はよくできてます。これはすべての女性で起きることなのです。
ところが、その量が過剰だと強い痛みを引き起こします。
ですので、治療は”プロスタグランジン”を抑える痛み止め、ロキソニンやボルタレンなどが適しています。
服用の仕方は、痛くなりそうになったら飲みはじめることです。
がまんして、がまんして、限界来てからようやく飲むよりはるかに効果があります。
また、子宮内膜の成長をコントロールできれば、”プロスタグランジン”の産生もコントロールできます。
それには低用量ピルが適しています。
劇的によくなることも多い治療法です。
低用量ピルは排卵を抑えますので、避妊が必要な方に適しています。

次に『なんかあるからめっちゃ痛い』場合です。
『なんか』とは、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、クラミジア感染、性器奇形、骨盤内癒着などなどです。
根本的な治療法はその『なんか』を取り除くことです。
手術が必要になるということです。
しかし、すべての方に手術を行うわけではありません。症状、年齢、妊娠希望の有無、悪性の可能性の有無などを考慮に入れたうえで手術を行うか、薬による治療を優先するかを考えていくことになります。
多くは前述の痛み止め、低用量ピルや、生理を止めるようなお薬などを使って、痛みを取り除くことと同時に病変の治療を考えていきます。

がまんしないで

すべての女性に多かれ少なかれ生理痛は起こります。
当たり前のことと思って、ずっとがまんしてきた方も多いと思います。
毎月の痛みがやわらげば、快適に過ごせる時間が増えますし、しっかりと子供に向き合う時間も増えます。
仕事も集中してできるようになります。
がまんは美徳でもありますが、生理痛に関してはがまんせず、快適な日常をすごしたほうがご自身も周りの人もきっとみんな幸せです。
生理痛が気になる方は、お近くの婦人科を受診してみてください。
まずは『なんか』あるのか、ないのかを確かめることが必要です。

そのうえでおひとり、おひとりに合わせて治療方針を考えて行きます。
年齢、妊娠の希望などにより方針も変わっていきます。特に子宮内膜症がある場合は、将来妊娠しにくくなる可能性がありますので、未来を見越した治療が必要になってきます。
生理痛、生理不順、月経前症候群など、女性の生理にまつわる問題は本当にたくさんあります。しかも毎月のことです。
だからこそ、なんでも相談できるかかりつけの婦人科の先生をぜひ見つけてください。
がんばるママの力強い味方にきっとなってくれますよ!

生理不順について – 産婦人科受診のその前に


生理不順とは?

前回の私のコラムは、女性ホルモンの正常な働きについてでした。
今回はその異常編、生理不順についてです。
産婦人科を受診されるきっかけとして、生理不順を訴えてこられる方はとても多いです。
毎月きっちりと生理が来る方が、急に遅れたり、いつもと違う血の出方になったりすると、アレッって思いますよね。
逆に、普段から生理周期が不規則な方はあまり気にされないことも多いです。

だれもが毎月まったく同じ周期で生理が来るわけではありません。1日でもずれれば異常というわけでもありません。
正常の範囲でもばらつきはあって当たり前です。では正常ってどういう状態をさすのでしょう。

正常月経の定義です。
月経周期:25~38日の間にあり、その変動が6日以内
出血持続日数:3~7日
正常の範囲も結構幅があります。そしてこれからはずれると「異常」ということになります。
「異常」ですから治療しましょう!・・・ということに、すべての方がなるわけではありません。

生理不順の理由

妊娠を除くと、生理が遅れる場合は2通りあります。
1)排卵そのものが遅れる場合
2)排卵しないまま時間が経過して出血する場合

1) 排卵そのものが遅れる場合
こちらの場合は遅れながらもホルモンがちゃんと出てることになります。
2か月以内ぐらいで排卵を伴って生理が来るなら、必ずしも治療は必要ありません。
でも妊娠の希望がある場合は月に1回規則正しく排卵があるほうが、妊娠のチャンスが増えますので、治療したほうがいいことになります。

2) 排卵しないまま時間が経過して出血する場合
この場合、どう対応するかは年齢にもよります。
40歳半ばを越えてくるならそのままでもよいかもしれません(出血の他の原因を調べる必要はあります)。
それ以下の年齢ならば、原因を調べたうえで治療したほうが良いでしょう。
こちらの場合は、生理周期が早くなったりすることもあります。
排卵がなければ妊娠にはいたりませんので、妊娠を希望されるなら排卵させる方向の治療が必要です。
今すぐの妊娠は希望されないかたでも、将来の妊娠のことを考えるなら、ホルモン環境を整える方向の治療が必要でしょう。

キーワードは?

いかがですか?だいぶややこしくなってきました。
上の文章すっとばしていただいても結構です。
キーワードは「排卵の有無」、「妊娠希望の有無」です。
ざっくりと考えれば、その組み合わせで4通り、年齢を「40歳」で分けると8通りの対応があるということになります。
それと、『周期がばらばらでいつ生理が来るかわからないのってイヤッ!』と思うか思わないか、という項目を追加すればさらに倍になります。倍返しです。
文章で書ききれるものではありませんでした。

まずは「排卵の有無」。
家で簡単にできることとして、基礎体温の測定があります。詳しくはこのようなサイトを参考にしてください。
体温の変動のパターンで排卵の有無が大体わかります。生理不順で産婦人科を受診されると、医師から「では基礎体温を測って、また来てください」などといわれます。
最初の受診から準備していけば、受診が一回少なくてすむかも。さらりとお得情報です。

次に「妊娠希望」。
これはご夫婦、カップルでよく話し合ってください。
今すぐ妊娠したいのか?一年後には妊娠したいのか?当分妊娠は希望しないのか?など、時期も含めて明確にできれば方針はよりクリアになります。

さらに「年齢」。
40歳を超えてくると、妊娠を希望されるかたにとっては、そのハードルが高くなってきます。
思うように妊娠に至らない場合、不妊治療専門のクリニックを受診することも必要になってきます。
また逆に、40歳を超えて思わぬ妊娠をすることもありますし、更年期的な問題がでてくる方もおられます。
40歳から45歳という年齢は、本当に人それぞれです。
どういう方針でいくのかは、担当のドクターとしっかり話をして決めていくことが必要になってきます。

数種類のホルモンがダイナミックに変化。だから女性は複雑?!

そもそもホルモンってなに?

今回はすべての女性に関係のある女性ホルモンのお話です。
女性ホルモンがご自分の体にあることはご存じと思います。
でも実のところ???というママが多いことと思います。
ですが、自分の体がどのようにコントロールされているのか知っておくのもいいかもしれません。

そもそもホルモンってなに?といいうところから始めましょう。
今回は少し講義っぽくなってます。肩の力を抜いてさらりとお読みください。

Hormoneの語源はギリシャ語の「目覚めて活動する」という意味のhormaoから来ています。1960年代まで「ある特定の器官で産生される生理活性物質で、血流によって運ばれ標的器官に至って微量でその作用を発揮するもの」という定義でした。

最近では、血流にのらずに隣の細胞や分泌細胞自身に作用する物質もホルモンと考えられています。それらをまとめて表現すると、「生体の機能調節に関与する物質」を総称してホルモンと呼んでいます。

すごくざっくりした話です。
いろいろな細胞から、いろいろな物質が分泌され、いろいろな細胞の活動を調節しています。
そういう物質のことをホルモンといいます。

女性ホルモン

そのホルモンのうち、卵巣から分泌されるものに、卵胞ホルモン(エストロゲンなど)、黄体ホルモン(プロゲステロンなど)男性ホルモン(テストステロンなど)などがあります。
女性でも男性ホルモンが出てるんですよ。
男性ホルモンは閉経後10年は卵巣から分泌されているといわれています。
大阪のオバチャンがいつのまにかオッチャンに変わるのはこのあたりに原因がありそうです。冗談です。

女性ホルモンとは、主にこのエストロゲンのことをいいます。
やっと女性ホルモンまでたどり着きました。女性らしさを作り出すホルモンです。
大昔の教科書には「発情ホルモン」と書かれています。今なら怒られそうなネーミングです。

この女性ホルモンであるエストロゲンや黄体ホルモンによって女性の体は絶妙に調整されているのです。

1か月の生理周期の中で主にこのエストロゲンや黄体ホルモンが規則正しく分泌されることによって、規則正しく生理がきます。
生理直後は少なかったエストロゲンが急激に増えることで、排卵が起こります。排卵すると今度は黄体ホルモンが増えてきます。
排卵から2週間ほどするとエストロゲンと黄体ホルモンが減少します。そうなることによって生理が起こります。
エストロゲンの分泌は脳の下垂体から分泌されるホルモンによってコントロールされています。そのホルモンもさらに上の視床下部というところからでるホルモンによってコントロールされています。さらにそれはエストロゲンによってコントロールされます。

だんだんわかりにくくなってきました。まとめます。
脳(下垂体と視床下部)と卵巣からでるホルモンがお互いを刺激したり抑制したりして、毎月の周期的なリズムを作っているのです。
どこかのポイントに問題が起きるとリズムが崩れて生理が規則正しくこなくなります。
このようなときに「ホルモンのバランスが崩れた」などとよく言います。

女性の体の中では・・

エストロゲンの一生を通しての働きです。まずは思春期にむけてだんだんと分泌が増えてきます。乳房が発達したり、子宮が増大したりする第二次性徴の発現を促します。
そして性成熟期に入ると周期的に排卵、生理をおこし、毎月妊娠できるような準備をしていきます。

また妊娠すると胎盤から多くのエストロゲンが産生されます。
50歳前ぐらいから、産生がだんだんと減少し、分泌も不規則になってきます。そして更年期となり閉経をむかえます。

ホルモン分泌は一生の中でも変化していきますし、1か月の生理の周期の中でも刻々と変化していきます。

女性の体の中では、1か月の間に数種類のホルモンが同時にダイナミックに変化していきます。
だから女性は複雑なんですね。

今回はママの体の中で、複雑、かつ精密にホルモンが出ていることを知っていただくだけで十分です。
すごいことが当たり前のように行われているのです。男とは比べ物になりません。

ちなみに男性の場合、男性ホルモンであるテストステロンが大体一定(日内変動はあります)に分泌されます。だから単純なんでしょうか?男って。

子宮頸がんで苦しむ女性が一人でも減れば


子宮頸がんは予防できる癌

今回は、子育て中のママのみなさま、特に小学6年生から高校1年生の女の子のお子様をお持ちのママに聞いていただきたいお話です。

前回は子宮頸がん検診のお話でした。病気の早期発見をテーマにしたお話です。早期発見、早期治療はどの病気に関しても大切なことです。
今回はもう一歩進んで、その予防に関するお話です。

がんが予防できる!?そうなんです、子宮頸がんは予防できる癌なのです。
現代はがんがワクチンで予防できる時代なのです。とても画期的なことだと思いませんか?

なぜ予防できるのでしょうか?子宮頸がんになるのはウイルスの感染が原因だからなのです。

子宮頸がんはHPVという名前のウイルスが子宮頚部に感染することで発生します。そのウイルスの感染をワクチンでブロックすることによって癌の発生を防ぐのです。
昨年のノーベル医学生理学賞は日本の山中教授が受賞されました(同じ大学の後輩としてホントにうれしいことでした)。その4年前の2008年のノーベル医学生理学賞はこのHPVが子宮頸がんの原因であることを突き止めたドイツの研究者が受賞しています。なにかすごい感じがしてきませんか?ノーベル賞級のワクチンです。

このHPVというウイルスはありふれたウイルスで女性の80%以上の方が一度は感染するといわれています。これは性交によって感染しますが、通常は自分の免疫力で自然に排除されます。ですが、排除しきれずに5年、10年と感染が続くとがん細胞に変化していくことがあるのです。

HPVは100種類ほどあることが知られています。そのうち10数種類のハイリスクタイプの感染が持続すると子宮頸がんになりやすく、そのなかでも16番と18番のHPVが一番リスクが高いと考えられています。そしてその16番と18番を合わせるとそれだけで70%近くになります。現在発売されているワクチンはこの16番と18番のウイルスの今後の感染をほぼ100%ブロックできます。
ですので、ワクチンの接種によって子宮頸がんになる確率を7割近く下げることが可能になります。またコンピューターのシュミレーション上では効果は20年近く続くと予想されています。

ワクチンの接種時期と費用

ワクチンの接種は若い時期ほど効果が高いと考えられています。一番効果が高くなるのは、性交を経験する前に接種することです。しかし、これまでの臨床試験において45歳まではワクチンの有効性が証明されています。
子育て中のママと、その娘さんがぴったりと適齢ということになります。

そしてこのワクチンが今年度から任意接種から定期接種に格上げされました。つまり、自治体の補助での接種が継続して可能になったのです。
例えば平成25年度の大阪市の対象者は小学6年生から高校1年生(平成9年4月2日から平成14年4月1日生まれ)の女子となっています。そして費用は無料です。(詳しくは各自治体にお問い合わせください。大阪市にお住まいの方はこちらのホームページを参考になさってください。)

前回のコラムに引き続き今回もでました。「無料!」

無料!無料!といってもパパやママが支払った税金から費用が出てるわけですので、正しくは支払った税金を少し取り戻してる感じですけど。
でもそう考えたほうが、受ける気が出てきませんか??

高校2年生以上の女性に関しては実費になります。医療機関によって値段は違いますが、1回16,000円前後で、接種は半年かけて3回する必要があります。詳しくはこのようなサイトを参考になさってください。
また、予防接種の副反応については接種時に担当医によく確認してくださいね。

この子宮頸がん予防ワクチンと、定期的な検診が広く普及することによって、今後子宮頸がんで苦しむ女性が一人でも減れば、産婦人科医として本当にうれしいことです。
そして、ママの力で娘さんを子宮頸がんから守れる時代がきたのです。
母娘でワクチンぜひ受けてくださいね!

未来のお子さんのためにもぜひ検診を受けてください!

女性特有のガン、子宮頸がん

子育て中のママのみなさま、子宮頸がんの検診を受けておられますか?妊娠の初期にはほとんどのママが検査を受けられたことと思います。その後、子育てが忙しいし、まだまだがんになる年じゃないし、と検診を受けておられない方も多いのではないでしょうか?

子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、20~30代の若い女性に増えているのが特徴です。罹患率は1万人に対し4-5人とこの世代の女性特有のがんとしては一番多いがんなのです。若いから関係ないというものではないのです。

子宮頸がんの原因はウイルスの感染が原因です。HPVという名前のウイルスです。とてもありふれたウイルスです。一生のうちに女性の8割の方が感染するとも言われています。
それでも、ほとんどの女性は子宮頸がんになりません。ほとんどは自分の免疫力で自然に排除されるからです。排除しきれずに5年、10年と感染が続くとがんに進行していきます
初性交年齢が下がってきていること、複数のパートナーを持つことなどライフスタイルの変化が最近の増加の原因と考えられています。ウイルスの病気ですので、現在では予防のためのワクチンも接種できます(詳しくは次の機会に!)。

自発的に定期健診を受ける必要

すべてのがんに共通することですが、大切なことは早期発見です。そのために定期検診がとても重要になります。日本では2006年のデータで24%ほどの検診受診率です。それに対しアメリカでは83%の受診率です。かなり違いますね。

がんは早く見つけて早く治療すれば治る病気です。早期発見が難しいがんもありますが、子宮頸がんは比較的発見が容易です。検診をしっかり受けていれば、がんの前の段階、前癌病変で見つかることも多く、適切な対処をすればがんへの進行を食い止めることができます。

がんが進行すれば命にかかわります。そこまでいかなくても、子宮を摘出せざるをえないことも起きえます。もうひとりこどもが欲しいと思っても不可能になってしまいます。早くみつかれば子宮を摘出しなくてもすむかもしれません。今のお子さんのためにも、未来のお子さんのためにもぜひ検診を受けてください!

検診もいろいろです。会社に勤めておられる方は会社の検診の形で受けることもできます。
しかし、そうでないかた。特に家で子育てに専念してがんばってるママは自発的に検診を受けに行く必要があります。検診センターや婦人科のクリニックで行われてるレディースドックの利用もひとつの方法です。また自治体の補助も受けることができます。

無料!検診は低負担です!

がん健診は自治体によってさまざまな補助があります。例えば大阪市の場合、2年に一回取扱い医療機関で400円で受けることができます。さらに5年に一回子宮がん検診の無料クーポンが送られてきます。平成24年度は20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の方に送付されているはずです。
(くわしくは下記大阪市のホームページをご覧ください。)
» 子宮頸がん検診を受けましょう
» がん検診推進事業

「なんかそんなようなものが来たような気が・・・」「どこにしまったっけ??」それもそのはず、平成24年の5月18日付で送付されているはずなのです。去年の春の話です。そりゃ、忘れてしまいます。

今回の子宮頸がんをテーマにした理由の一つがこれです。クーポンの期限が今年の3月末までなのです。なんといっても「無料」です。いいひびきですね「無料!」
指定の年齢に該当するかたは、ぜひこの機会に検診を受けてください!
まずは家中探してみてください。見つからない?そんな場合は市のほうで再交付できます
手続きに1か月ほどかかるようです。お早目に!

「なんかしんどい」の原因

なんかしんどいなぁ・・・ やるきでないなぁ・・・

そんなこと思うことありませんか。
結構あると思います。
でもたいがい知らんまに回復して、また元気に子供と格闘してる。
今日は、はよ寝よ!これで解決することも多いですよね。
でも、最近続くなあ・・・なんてこともあるかもしれません。

子供と格闘→しんどいなぁ→はよ寝よ→知らん間に回復

実は「なんかしんどい」の原因は多すぎるぐらいにあります。
肝臓の病気、腎臓の病気、血液の病気、甲状腺の病気、精神の病気などなど。
それ以外に、女性ホルモンの影響でそういう症状がおきることもあります。

子育て中のママの女性ホルモン環境

子育て中のママの女性ホルモン環境は大きく変化していきます。

妊娠→分娩→授乳→生理の回復→閉経

女性ホルモンが出たり止まったり大忙しです。
その、女性ホルモンの変動がココロやカラダに影響を与えます
それと並行して、結婚、出産、子育て、仕事、さらには親の介護などなど、いろいろなことが次から次へと起こります。

体の変化と社会的な変化が重なり合って「なんかしんどい」になってもさほど驚きません。
やっぱりママは大変です。
ほんというとパパも大変なんですけどね。笑

生理前のしんどさ

なかでも生理前になると調子が悪くなり、生理が始まるとともに軽快する場合、月経前症候群(Premenstrual syndrome PMS)という疾患が考えられます。その頻度は全女性の50-80%という報告もあるぐらいで、かなりの方が多かれ少なかれ経験することでもあります
症状も200から300あるともいわれます。その中で治療を希望される、あるいは治療が必要となる方は3-7%程度といわれています。

この疾患は、排卵後から生理が始まるまで分泌される黄体ホルモンが直接的に、間接的に関与していると考えられていますが、まだはっきりその原因が解明されたわけではありません。
でも、その黄体ホルモンを薬でコントロールすることによって、ココロやカラダへの影響を減らすことができます。また、漢方薬もその助けになりますし有酸素運動なども効果的です。

子どもと楽しく向き合って

今まで、女性にとって「そんなもん」と思われていることはたくさんあります。
「がまんするしかない」と本人も周りの人も思っていることもたくさんあります。
生理痛しかり、更年期しかり。
この月経前症候群もそのひとつです。

我慢強いことも日本人の美徳ですが、治療することによって、いらいらせず、より前向きに楽しく子供と向き合うことができるようになります

内科で「異常ありませんね」と言われたり、よく考えると生理前にひどいかな、と感じられる場合は、ぜひ一度当院にご相談ください。